研究課題/領域番号 |
17K08991
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
浅井 さとみ 東海大学, 医学部, 准教授 (60365989)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 耐性遺伝子 / 多剤耐性獲得機構 / 緑膿菌 / アシネトバクター バウマニ / 抗菌作用 / 熱傷マウスモデル |
研究実績の概要 |
薬剤耐性遺伝子獲得の解明のため、2017年度から2018年6月までに薬剤感受性株とともに、薬剤耐性にかかわらず保管した緑膿菌臨床分離菌株について、責任遺伝子を解析中である。 臨床上抗菌薬の多用に伴い多剤耐性化する緑膿菌の薬剤耐性の分子機構を解明する中で、我々は排出ポンプの重要性に着目し、ポンプ機能を抑制する方法を見出した。ポンプ機能を抑制することにより抗菌作用を示す物質が検討され、in vitroでは抗菌作用が確認できた。同様の手法を用い、アシネトバクターについても抗菌作用物質を作製することができることを確認した。抗菌作用物質については将来的にはヒトに応用することを念頭に、ペプチド、ポリクローナル抗体、さらにはモノクローナル抗体へと、より安全性が高く、標的特異性の高い物質に改良中である。 近年、伴侶動物における感染症に対する抗菌薬の長期投与が問題になっていることから、表層感染に対しては、ヒトとは異なり抗菌薬を使用せず感染を抑制する方法として、UVフラッシュ照射の効果を検討した。UVフラッシュ照射はin vitroでは数秒以内で十分な殺菌効果が認められることがすでに我々の研究により明らかになっている。 ヒトを対象とした抗菌作用物質と伴侶動物に向けたUVフラッシュ照射治療のいずれも、生体における有効性は未だ確認されていない。そこで2018年度は、その有効性をマウスモデルにて証明すべく、熱傷マウスの作製を2017年度より引き続き取り組んだ。瘢痕化を残さず完全に治癒するII度の熱傷マウスの作製を試み、熱傷創部の治癒状態の観察(治癒の状態と期間、組織の状態を含む)を行った。II度熱傷作製の条件が確立した後、その技術の習熟を中心に予備実験を繰り返し行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
熱傷マウスモデル作製と作製技術の習熟後、引き続き感染動物実験を実施する予定であったが、施設内に感染動物実験を行える設備が整わず実施困難となった。改修工事を含む大学施設側の協力を得て、2019年度4月から実施できることになった。
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今後の研究の推進方策 |
1.臨床分離菌株の解析:2017年度~2018年度5月までに収集した緑膿菌臨床分離株の遺伝子解析について、引き続き実施する。多段階的に多剤耐性化した菌株については、獲得耐性の分子機構を明らかにするため、一連の菌株の全ゲノム解析にて、比較分析する。 2.抗菌作用物質の開発:新たな候補を複数作製し、in vitroの検討を引き続き実施する。また、効果があるものについては最終的にはモノクローナル抗体の作製を試みる。 3.創部感染マウスの作製:2019年度はII度熱傷マウスを用いて、創部感染動物モデルの作製を行う。緑膿菌、アシネトバクターに加えて、黄色ブドウ球菌などの一般的な病原菌とそれらの薬剤耐性菌について、熱傷創への細菌感染モデルを確立する。条件が確立した後、上記2で作製した物質や、UVフラッシュ照射の効果をin vivoで検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染動物実験室の設備工事のため実験が遅延した。設備が使用可能となった今年度は、熱傷マウスの感染実験を進めていく。予備実験は退役マウスでPseudomonas aeruginosa・Acinetobacter baumannii・Staphylococcus aureus・Escherichia coliの各標準株による感染の条件を検討する。その後、本実験は予備実験時の4菌種に加えmultidrug resistant-P. aeruginosa (MDRP)、-A. baumannii (MDRAB)2菌種の計6菌種で行う。マウス、菌株調整に使用する培地、消耗品に次年度使用額を計上する。
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