研究課題
ヒト新規ペプチドのCatestatin、ヒトGTP代謝産物であるNeopterin、ファイトケミカル(植物ホルモン)のOsmotin の動脈硬化抑制作用を世界で初めて明らかにするため、我々が最も得意とする基礎および臨床の両面からなるトランスレーショナルリ サーチを行って検証した。1. ヒト血管壁細胞を用い動脈硬化抑制作用をin vitroで検証:動脈硬化の主要現象である内皮細胞の炎症、マクロファージの泡沫化 、平滑筋細胞の遊走・増殖、細胞外マトリックスの産生に対して、Catestatin、Neopterin、Osmotinは共に抑制的に働いた。2. 動脈硬化モデル動物への投与にて動脈硬化抑制作用をin vivoで実証:Catestatin、Neopterin、OsmotinをアポE欠損マウスに浸透圧ポンプを用い4週間投与したところ、大動脈における動脈硬化病変の進展を有意に抑制できた。3. 冠動脈疾患患者における臨床的検討:CatestatinおよびNeopterinの冠動脈病変内の発現は共に増加していた。これは、動脈硬化の進展に抗うように反応性に増加したものと推測された。血中濃度では、非冠動脈疾患患者に比べ冠動脈疾患患者では、Neopterinは有意に増加していたが、Catestatinは有意に低下していた。Catestatinの血中濃度が低下していたのは、急性冠症候群の発症直後であったため過剰に分泌されていたカテコラミンがCatestatin分泌に対し抑制的に関与していたことが推測された。Catestatinとカテコラミンには負の相関が既に報告されている(Biomarkers 2011;16:327-7)。以上から、Catestatin、Neopterin、Osmotinは、動脈硬化抑制作用を有していることが明らかになリ、動脈硬化に対する治療薬の可能性が高いと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
研究分担者や連携研究者の全員が自分の役割をしっかりと果たし協力し合ったことで、実施計画は全般的にみて順調に遂行されていると思われる。
今後は臨床研究を基盤に、CatestatinとNeopterinを用いた冠動脈疾患のバイオマーカーの有用性の検討 、並びにこの2つの血管作動性物質に加えファイトケミカルであるOsmotinを利用した同疾患に対する予防・治療薬の開発(創薬)を堅実に遂行していく。1. 冠動脈疾患のバイオマーカーとしての有用性の検討:急性冠症候群患者200例、非冠動脈疾患患者100例、健常者50例において、CatestatinとNeopterinの血中濃度および冠動脈造影所見の重症度との関連を詳しく解析する。更に、Receiver Operati ng Characteristics (ROC) Curveを描き、Area Under the Curve (AUC)を求め、冠動脈疾患に対するバイオマーカーとしての精度を比較検討する。2. 動脈硬化治療薬の開発(創薬):Catestatin、Neopterin、Osmotinを用いて、各々のアミノ酸配列において抗動脈硬化作用の活性中心を含みかつ副作用の無い低分子アナログ製剤をそれぞれ精製し、動脈硬化治療薬の開発を進めていく。並びに、ナノカプセル等のドラックデリバリーシステムを開発していく。3. 研究成果をまとめて発表:学会やシンポジウムでの発表、国際学術誌に論文を執筆・投稿していく。
今年度生じた残金(6914円)だけでは、必要なものが買える金額ではなかった為、予算の有意義な使用を考え、来年度予算と合わせて消耗品を購入する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
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