研究実績の概要 |
近年、microRNA(miRNA)は、exosomesやmicrovesicles以外に、HDLなどのリポタンパクに含まれている事が明らかになっている。また、HDL中に含まれるmiRNA(HDL-miRNA)は、血清や血漿などの体液中に非常に安定した状態で存在しており、HDL-miRNAは、家族性高コレステロール血症および冠動脈疾患患者において、健常者と比較して、有意な変化を示すとの報告がある。本研究では、一般的に測定されているTotal miRNA やexosome 中のmiRNA を分析するのではなく、HDL中のmiRNA を解析し、生活習慣病に起因する動脈硬化の病態進展や発症予測における新規バイオマーカーとしての可能性を検討するものである。現在、我々は某地域住民の健康診断を受診した被検者を対象に、動脈硬化の有無を超音波検査による頚動脈の内膜中膜複合体厚(IMT)を測定し、動脈硬化症とHDL-miRNAの関係を解析した。さらに、動脈硬化症、Ⅱ型糖尿病および高血圧など様々な疾患のベースとなる肥満とHDL-miRNAの関係についても検討した。その結果、動脈硬化や肥満においてHDL-miR-24, 92, 223, 486は有意な増加を認めたが、血漿中のTotal miR-24, 92, 223, 486では、有意な変化を示さなかった。また、その時の一般的な動脈硬化のマーカーとされているHDL-コレステロール濃度は、健常群と動脈硬化群の間では、有意な変化を示さなかった。従って、HDL-miRNAが動脈硬化における新規のバイオマーカーである可能性が示唆された。
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