研究実績の概要 |
近年、血中のTotal miRNAを測定するだけでなく、それぞれのキャリアー別にmiRNAを測り分けることにより、各種疾病の詳細な評価が可能となることが示唆されている。そこで我々は、高比重リポタンパク(HDL)中に存在するmiRNA注目して、動脈硬化とHDL-miRNAの関連を明らかにすることを目的とした。 現在報告されているHDL-miRNAの測定法は、HDLの精製法に長時間を有すことや手順も煩雑であることが欠点である。そこで、HDL-miRNAの臨床検査への応用に向けた検討を行うにあたり、検体処理能力を向上させた簡易的な精製法を確立した。この方法の同時再現性を調べるために、同一被験者から得られた血漿(n=10)を精製し、HDL中に含まれることが報告されているmiR-223, miR-92, miR-146aおよび miR-150のCt値からCV値を求めた。各miRNAのCV値は1.08~2.21%と良好な結果となった。さらに、qRT-PCR法を用いてHDL-miRNAの定量値をコピー数として求めるために、miRNAのコピー数算出のための検量線を作製し、HDL-miRNAの定量法を確立した。 次にこの方法を用いて、一般住民健診受診者の血漿サンプルから4種類のHDL-miRNA(miR-223、miR-92、miR-146a、miR-150)を測定した。その結果、動脈硬化所見を有する者では2種類のHDL-miRNA(miR-223、miR-92)の有意な増加を認め、HDL-miRNAは動脈硬化の進展に関する新規バイオマーカーになり得ることが示唆された。また、Ⅱ型糖尿病や高血圧など様々な疾患のベースとなる肥満とHDL-miRNAの関連も検討したところ、肥満者においてHDL-miR-24, 92, 223, 486は有意な増加を認め、HDL-miRNAの肥満における変動も明らかとなった。
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