研究実績の概要 |
平成29年までの研究期間において,我々が開発した遺伝子組み換えタンパク質(rMIKO)の潰瘍性大腸炎抑制効果について,硫酸化デキストラン誘導潰瘍性大腸炎モデルラットを用いてその有効性を確認した.平成29年度は,新たにヒトに対する遺伝子組み換えタンパク質(hMIKO-1, -1a, -1b, -1c)を作製した.最初に,ラットに対する投与実験のプロトコールと同様に,hMIKO-1をラットの腹腔内に投与し,潰瘍性大腸炎の抑制効果を検討したところ,劇的に抑制効果が認められた.この結果は,hMIKO-1が潰瘍性大腸炎の治療薬としての可能性を強く示唆するものである.そこで,hMIKO-1の治療薬としての有効性を示すメカニズムについて検討した.その結果,hMIKO-1はマクロファージ(ラット)に選択的に取り込まれ,核内に移行することを明らかにした.さらに炎症性サイトカインmRNAの発現を有意に抑制すること,逆にIL-10やTGF-betaのmRNAの発現を有意に増加させた.この結果は,hMIKO-1がマクロファージの核内で炎症誘導に関連するmRNAの発現を抑制することにより,マクロファージの過剰な活性化を抑制すると考えられる. 一方,単球性白血病細胞をPMAで分化させたヒトマクロファージを用いて,hMIKO-1の細胞内動態を検討したところ,明らかにラットの実験結果と同様の結果を得た.現在,hMIKO-1a, -1b, -1cについても検討中である.最近,hMIKO-1が間質性肺炎や強皮症(いずれも難病指定)にも極めて有効であることが明らかになったことは,極めて注目される(大阪医科大学との共同研究).本タンパク質の作用メカニズムの詳細は明らかでないが,マクロファージの異常な活性化経路を効果的に抑制,もしくは炎症誘導過程の一部を阻害している可能性が強く示唆された.
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