研究課題
非ウイルス性の慢性炎症が癌化を誘導するメカニズムは未解明の点が多い。我々はc-myc遺伝子転写抑制因子FIR、Far-upstream element-binding protein-interacting repressor、(別名PUF60)がWntシグナル(c-myc遺伝子の発現増大をもたらす)の活性化からみた発癌機序や早期診断法の確立をめざしている。消化器癌ではFIRの転写抑制部位のexon 2を欠損したスプライシング変異 (FIRdelexon 2) が発現し、ドミナントネガティブ効果によりc-myc遺伝子の転写が活性化している。一方悪性腫瘍が合併する自己免疫疾患患者(シェーグレン症候群や皮膚筋炎)血清中に抗PUF60/FIR自己抗体が見いだされた。本研究ではWntシグナルに注目して、非ウイルス性の慢性炎症刺激に基づく発癌メカニズムをマウスモデルと臨床検体を用いて明らかにし、抗FIRs自己抗体の検出系を確立して自己免疫疾患に合併する早期発癌の新規癌診断法の一助にすることを目的とした。本年度は、多くのがん患者の血清中にも抗PUF60/FIR自己抗体が検出されることを確認して論文報告した。現在、病態との関連をより正確にしらべるためのELISA系の作製に着手した。そのための抗PUF60/FIR抗体をファージディスプレイ法により同定している。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、多くのがん患者の血清中にも抗PUF60/FIR自己抗体が検出されることを確認して論文報告をすることができた。さらに現在、病態との関連をより正確にしらべるためのELISA系の作製に着手した。そのための抗PUF60/FIR抗体をファージディスプレイ法により同定している。現在、抗原との反応性を確認してる。新規の抗体が作製できたことが確認できれば、すでに作製したFIR/PUF60のC末端のマウスモノクローナル抗体を合わせてサンドイッチELISA系が可能である。
本研究では慢性炎症刺激による発癌動物モデルと臨床検体の解析を行い、Wntシグナルの活性化とFIRの機能異常の関連性に着目して慢性炎症に癌化がみられるトリガー(鍵分子)を同定する。本研究において種々の癌患者の血清中のFIRΔexon2に対する自己抗体の存在が確認できた。今後の展開では、抗FIR/FIRΔexon2自己抗体の検出系を確立してFIRスプライシング変異を指標とした新しい癌診断法の一助にすることを目的とする。精製されたFIRΔexon2(513アミノ酸)の全長タンパク質を抗原とした(星野忠治)。事前に文書による同意を得た種々の癌患者(千葉大病院通院中)と健常者(コントロール)血清を用いて、FIRΔexon2に対する自己抗体が存在するかをドットブロットにより調べたところ抗FIRΔexon2自己抗体が検出された。現在までに検討では、ヒト胃癌組織とGanマウス胃腫瘍のタンパク質の比較するとp-ERK, FBW7, E-cadherinの発現に違いが認められた(未発表データ)。ヒト胃癌組織ではp-ERK, FBW7, E-cadherinの発現変化が炎症から癌化への形質転換に重要であることが強く示唆されている。抗FIRs自己抗体はシェーグレン症候群や皮膚筋炎で報告されたが、大腸癌をはじめとするヒト癌患者血清における報告は見られない。今後、抗FIR/FIRΔexon2自己抗体のELISAによる迅速かつ正確な検出系の確立を目指し、抗FIR/FIRΔexon2自己抗体のELISAキットの開発と新規診断法の開発を目指す。
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