研究実績の概要 |
本研究では慢性炎症刺激による発癌動物モデルと臨床検体の解析を行い、Wntシグナルの活性化とFIRの機能異常の関連性に着目して慢性炎症に癌化がみられるトリガーを同定することを目的とした。そのために、種々の癌患者(千葉大学医学部附属病院通院中)の血清中のFIRΔexon2に対する自己抗体の有無、および存在する場合の検出系を確立してFIRスプライシング変異を指標とした新しい癌診断法の一助にすることを行った。具体的には、精製されたFIRΔexon2(513アミノ酸)の全長タンパク質を抗原を精製した(研究分担者:星野忠治)。事前に文書による同意を得た種々の癌患者(千葉大病院通院中)と健常者(コントロール)血清を用いて、FIRΔexon2に対する自己抗体が存在するかをドットブロットにより調べたところ抗FIRΔexon2自己抗体が検出可能であり論文報告した(Kobayashi S, et al. Anti-FIRΔexon2, a splicing variant form of PUF60, autoantibody is detected in the sera of esophageal squamous cell carcinoma. Cancer Sci. 2019)。ヒト胃癌組織ではp-ERK, FBW7, E-cadherinの発現変化が炎症から癌化への形質転換に重要であることが強く示唆された(Ailiken G,et al. Post-transcriptional regulation of BRG1 by FIRΔexon2 in gastric cancer. Oncogenesis. 2020 Feb 18;9(2):26)。今後、抗FIR/FIRΔexon2自己抗体のECLIA法による迅速かつ正確な検出系の確立と実用化を目指す(企業と共同研究契約済)。
|