研究課題/領域番号 |
17K09009
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奥村 伸生 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (60252110)
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研究分担者 |
平 千明 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (40779310)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フィブリノゲン / フィブリン重合反応 / IgA-λ型Mタンパク |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究では、IgA-λ型M蛋白によりフィブリノゲン(Fbg)機能異常(トロンビンによるフィブリン(Fbn)重合反応異常)を生じる原因を検討した。 初めに、抗IgAα鎖抗体を用いたimmuno-affinityカラムクロマトにより患者血清IgAを精製するとともに、IF-1モノクローナル抗体を用いたimmuno-affinityカラムクロマトにより患者血漿Fbgを精製した。対照として健常人患者血清IgAと血漿Fbgを精製した。 患者FbgにIgA-Mタンパクが結合しているかを、SDS-PAGEと抗Fbg抗体、抗IgA抗体を用いたWestern blot法で検出した。その結果、患者FbgにはわずかにIgA-Mタンパクが結合していることが明らかになった。一方、患者血漿中のIgAはFbgと結合していたとしても、精製段階で解離してしまうので、証明は困難であった。別の生成方法を検討しないと結論は出せない。 患者血漿を用いたFbn重合反応では著しい低下が観察されたが、精製患者Fbgの重合反応では、低下が観察されなかった。精製健常人血漿Fbg及び精製患者Fbgに精製患者血清IgAを添加する実験を行った。この結果、どちらもFbn重合反応においても低下を再現することはできなかった。 このため、患者血漿と健常人血漿にトロンビンを添加しFbn塊を形成させ走査型電子顕微鏡で観察したところ、患者血漿では正常のFbn塊とは全く異なる異常な塊が観察された。 以上の結果より、患者血漿中の多くのFbgはIgA-Mタンパクと結合しており、トロンビンによる異常な凝固反応を呈するが、精製したFbg中にはIgA-Mタンパクと結合したものの割合が非常に少なく、すなわちIgAが結合しているFbgの大部分が精製されないために、正常な凝固反応を阻害することができなかったと判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験は概ね実施できたが、最終的に血清中あるいは血漿中IgAにフィブリノゲンが結合しているかどうかの詰め実験が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目である平成30年度は、血栓症を引き起こすホモのフィブリノゲンBβ鎖Ala68Thr変異の、トロンビンによる重合反応の異常の程度を明らかにする実験に移行する。昨年度からの準備は順調に進行しており、1年間で結論を得ることができる見通しである。
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