研究課題/領域番号 |
17K09009
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奥村 伸生 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (60252110)
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研究分担者 |
平 千明 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (40779310)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フィブリノゲン機能異常症 / 血栓症 / 出血 / フィブリン重合反応 / トロンビン |
研究実績の概要 |
2015年に静岡県在住者の血栓症を有するフィブリノゲン機能異常症BβAla68Thr変異ホモ症例を経験した。家系調査では、発端者の父、母、姉はヘテロ症例であり、妹は症状のないホモ症例であった。ホモ症例が血栓症を生じる危険が高い原因については、同じ変異症例を用いた海外の研究により、変異フィブリノゲンのトロンビン結合力が低下することにより血栓形成部位に生成したトロンビンを止めおくことができずに、トロンビンが全身に拡散することが証明されている。 我々は2018年において、この変異フィブリノゲンはフィブリンを形成する機能も低下していることから、出血の危険があるかどうかを、精製ホモ・ヘテロ患者フィブリノゲンを用いて研究した。 その結果、日常臨床検査であるフィブリノゲン定量検査や今回実施したフィブリノゲン機能解析に用いている室温(20-25℃)、フィブリノゲン低濃度(0.18 mg/mL)、トロンビン低濃度(0.05 U/mL)条件下では、フィブリノゲンのフィブリンへの転換はホモ患者フィブリノゲンにおいて著しく低下し、ヘテロ患者のフィブリノゲンにおいては健常人フィブリノゲンと比較してやや低下した。一方、生体内に近い条件下(37℃、フィブリノゲン高濃度: 0.36 mg/mL、トロンビン高濃度:1.0 U/mL)では、フィブリノゲンのフィブリンへの転換はホモ患者フィブリノゲンにおいてもかなり改善し、健常人フィブリノゲンと比較してかなり改善した。また、ヘテロ患者のフィブリノゲンにおいては健常人フィブリノゲンとほぼ同様にまで改善した。これらのことより、フィブリノゲン機能異常症BβAla68Thr変異ホモ症例は血栓症の危険が高いものの、出血の危険性はかなり低いものと推測された この内容は、国内学会で発表するとともに、英文論文として報告した(研究発表参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように2年目の研究対象の症例については、順調に解析が終了し学会発表・英文論文掲載が完了した。 しかし、1年目の課題であるIgA Mタンパクによる後天性フィブリノゲン機能異常症例の研究は、最終的な論文執筆の段階であり、投稿までにもう少し時間を要する。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の課題症例に基づく、フィブリン重合反応をまったく生じないリコンビナントフィブリノゲンγΔN319,D320の機能異常の原因を解析するために、すでに、その異常個所に近いリコンビナント変異フィブリノゲンγD318YとγE321Dを産生させ、精製した。今後はその機能異常の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目の研究成果のまとめ論文完成が約1カ月遅れ、英文校正費が4月以降の支出となってしまったため。
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