研究実績の概要 |
ヒト甲状腺組織およびラット甲状腺組織を単一細胞レベルまで酵素によって分散し、TTF-1、N-Cadherin, NIS, サイログロブリンに対する4種類の蛍光標識抗体にて染色後FACSで解析した。ヒト乳頭癌の解析では28例中3例で明らかな分画(P1,P2)を認めた。P1に比較してP2はTTF-1とN-Cadherinを高発現していたが、これらの分画はNISとサイログロブリンの発現は変化を認めなかった。どちらの分画も甲状腺由来の細胞と考えられたが、乳頭癌組織の中に2つの異なる分画が存在することが示唆された。これらの分画の細胞を回収してRNAの解析を試みたが、細胞数が少ないことと、RNAの品質が劣化していたため、信頼性のある解析ができなかった。ラット甲状腺から採取したラット甲状腺組織内の正常細胞を用いた解析では、3つの分画(P1,P2,P3)を認めた。P2分画は、P1分画に比べてTTF-1、NIS, サイログロブリンを高発現していた。このうち、P1とP2についてFACSで細胞を回収、RNAを精製して解析することとした。RNAをT7 Promoterを使用して増幅した後、標識した。RNAは量・品質とも問題が無く、DNAマイクロアレイによる解析に供することができた。マイクロアレイによる解析では、P2分画はP1分画に比べて、TG、PAX8、DIO1、FOXE1, TPO等、甲状腺濾胞上皮細胞特異的な遺伝子を高発現していた。これに比し、P1分画はCOL6A3、COL2A1、FGFR1等、繊維芽細胞に発現している遺伝子の発現が亢進していた。この結果からP1分画はおそらく線維芽細胞等の乾漆細胞の集団であり、P2分画は純粋な濾胞上皮細胞なのではないかと推測された。
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