研究課題
私達はこれまでに、RNAポリメラーゼIIホロ酵素複合体を構成するメディエーターを単離しそのサブユニット構造を明らかにした。メディエーターのサブユニットMED1は、核内受容体特異的コアクチベーターであり、細胞の増殖・分化・恒常性維持に重要な役割を果す。私達はこれまでに、間葉系前駆細胞に発現するMED1が、造血において、造血幹・前駆細胞の維持に重要な役割を果すことを明らかにした。また、MED1欠損間葉系間質細胞で発現が低下する遺伝子の中で、特に約20個の遺伝子について、造血のニッチ関連遺伝子ではないかとの仮説を立てて検討を加え、これまでにオステオポンチン、FGF-7、ぺリオスチンをMED1関連の造血ニッチ分子として同定し報告した。本研究では、その他の分子の中で、MGPに注目して研究を進めている。MGPはグルタミン酸残基がγカルボキシル化して生理活性が出現しカルシウム沈着を抑制すること、まやMGP遺伝子プロモーターにはビタミンD受容体結合部位が存在するように、カルシウム代謝で重要な役割を果す可能性があるが、造血における役割は全く知られていない。MED1は核内受容体特異的コアクチベーターであることから直接転写調節している可能性を考えた。しかし、MED1欠損細胞にMED1を導入してもMGP発現が回復しなかったことから、ビタミンD受容体以外の転写調節機構の間接的関与が考えられた。MGPはMBPシグナルに介入することが知られる。そこでBMP-2とBMP-4の発現を調べたところ、間葉系細胞のMGP発現が造血細胞との共培養後にサイクリックに振動したが、それと同調して、または周期をやや異にして、これらのBMP分子の発現が誘導された。これらのことから、この共培養で、MGPがBMPシグナルに介入してニッチ機構を担う可能性が示唆された。今後さらにMGPの造血ニッチ機構の詳細を調べる予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、MGPの造血における役割を初めて示す研究であり、オリジナリティーの高い発見である。MGPがなぜ骨組織に強く発現するのかを解き明かす可能性がある。
本研究における結果・結論を別の方法で確認できると説得力が増すと考えられる。そのような方策を様々に検討しており、次年度に遂行する予定である。
端数の残高を少額の物品購入などで無理に使用するよりも、次年度に有効利用するほうが良いと判断し、そのようにした。次年度予算に合わせて使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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