研究課題
同種造血幹細胞移植後の合併症や再発を早期に簡易に診断、予測できる方法を確立するため、以下の研究を行った。平成29年度は骨髄移植7例、末梢血幹細胞移植25例、臍帯血移植11例実施し、そのうち22例がHLA一致例半合致移植で、急性、慢性GVHD、生着症候群、血球貪食症候群の発症の評価を行った。過去からの症例を含めて121例で、移植後30日、60日、90日、180日、365日目に末梢血中の免疫担当細胞をハイエンドフローサイトメトリーを用いてNaive B細胞、Memory Bl細胞、B-cell progenitor、follicular helper B細胞、Naive T細胞、Central memory T、Effector memory T、Costimulation competent T、Costimulation incompetent T、NK細胞、NKT細胞、M2 macrophage、regulatory T細胞(Treg)、memory regulatory T細胞、γδT細胞の回復過程を測定した。現在、症例を集積している。健常人末梢血を用いて、Tregパネル(CD6、25、31、45RA、4、3、FoxP3)を用いてFoxP3以外のTreg分離法を検討した。類洞閉塞症候群(SOS)の早期診断法の確立のため、129件で、移植前、5日後、30日後、100日後、SOS発症時の凝固系マーカー、サイトカインを測定した。13例でSOSを発症し、経直腸門脈シンチ、腹部超音波検査、Elastgraphyを測定した。同種造血幹細胞移植後の血球貪食症候群診断におけるフェリチン値30000以上が診断に有用で、 発症時にIFN-γ、IL-10、MCP-1、IP-10が高値であることを見いだし、Leukemia Lymphoma誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
年間44例の同種造血幹細胞移植、うち22例が移植後シクロホスファミド投与を用いたHLA半合致移植を施行しており、研究期間3年間で、100例以上の同種造血幹細胞移植、60例以上のHLA半合致移植を望めると考えられる。また、過去からの検体を合わせて、全体で200例以上の症例の蓄積が期待できる。同種造血幹細胞移植後の血球貪食症候群診断におけるフェリチンおよびサイトカイン、presepsin (soluble CD14-subtype)の診断における有用性についてLeukemia Lymphoma誌に発表した。
同種造血幹細胞移植、HLA半合致移植を今まで通り実施し、患者のインフォームドコンセントをえて、検体を収集する。移植後免疫再構築の評価:引き続きデータを集積し、解析を行い、論文化する。類洞閉塞症候群(SOS)の早期診断法の確立:引き続きデータを集積し、解析を行い、論文化する。症例特異腫瘍抗原の決定と移植前後の微少残存病変(MRD)の評価法の確立のために、初発および再発時の急性白血病は寛解導入療法前に、同種造血幹細胞移植を予定している患者は移植前の病状評価時に、マルチカラーフローサイトメトリーにより急性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病のMRD評価のためのパネル抗体を用いて10種類の表面抗原を同時に測定し、個々の白血病細胞特異的な抗原パターンの同定を行う。移植後30、60、90、180、365日の病状を評価時、免疫抑制剤の中止後やドナーリンパ球輸注後に骨髄液にてMRDを測定する。移植前のMRD陽性群とMRD陰性群に分けて、MRDの有無が予後に与える影響を検討する。さらに全生存、再発率、非移植関連死亡などを他の同種移植における予後因子とともに、Cox比例ハザードモデルやFine-Gray比例ハザード回帰によって解析する。転座遺伝子転写産物の量と表面抗原解析でのMRD量との相関については、MRDの割合を連続変数として用い、転座遺伝子転写産物の量の相関をスピアマンの順位相関係数、ケンドールの順位相関係数など用いて評価する。さらに、前処置治療前、幹細胞移植前、白血球生着時期、移植後30日、60日、100日、生着症候群、急性および慢性GVHD、ハプロイムノストーム発症時、PTCYハプロ移植ではさらに移植後0、1、3、5、7、14、21日の血清または血漿中のサイトカイン、マイクロRNAの解析を行う。
H29年度末に実施予定であった同種造血幹細胞移植が延期になったため、その検査費用をH30年度に持ち越した。全体の計画に変更はない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Leukemia Lymphoma.
巻: 59 ページ: 772-773
10.1080/10428194.2017.1361033
Transplantation
巻: 101 ページ: 2801-2809
10.1097/TP.0000000000001813
British Journal of Clinical Pharmacology
巻: 83 ページ: 000-2007
10.1111/bcp.13303
巻: 58 ページ: 2489-2492
10.1080/10428194.2017.1292356
巻: 58 ページ: 1664-1672
10.1080/10428194.2016.1262034
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/