研究課題
同種造血幹細胞移植後の合併症や再発を早期に簡易に診断、予測できる方法を確立するため、以下の成果を得た。類洞閉塞症候群(SOS)の早期診断法の確立:11例の同種造血幹細胞移植患者において経直腸門脈シンチおよび経静脈門脈圧(HVPG)測定、肝生検を実施した。経直腸門脈シンチのシャントインデックス(SI)値は、HVPG値と相関した。同種移植後のSOS診断に対するHVPGのROC曲線下面積(AUC)は0.85であり、最良のカットオフ値は10mmHgと計算され、陽性予測値(PPV)が80%、感度80%、特異度83%。 SOS診断に対するSIのAUCは0.77であり、カットオフ値は56%、PPVは80%であり、シアトル基準におけるPPV60%、感度60%、特異度67%であった。同種HCT後早期(30日以内)に肝障害および/または腹水症を発症した7人の患者では、HVPGとSIの両方がSOS患者(HVPG:13.3mHg、SI:58%)で非SOS患者(HPVG:4.3mHg、SI:26%)より有意に高かった。この結果は第60回アメリカ血液学会、第42回日本造血細胞移植学会で報告し、さらにBone Marrow Transplantation誌に発表した。移植前のMRDの予後に与える影響:非寛解で同種造血幹細胞移植を行った急性骨髄性白血病46例において単変量解析で、移植前末梢血WT1レベルに比例して死亡リスクが優位に増加した(HR 1.6、95%CI 1.1-2.3、p=0.007)。ROC解析で死亡、際移植に対するWT1のカットオフは5000 copies/μgRNAと算定され、多変量解析でもWT1 5000 以上が死亡リスクと有意に関連した(HR 2.7)。この結果は第60回アメリカ血液学会および第42回日本造血細胞移植学会で報告し、さらにTransplantation誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
研究期間で年間44例、38例の同種造血幹細胞移植、うち32例が移植後シクロホスファミド投与を用いたHLA半合致移植を施行しており、研究期間3年間で、100例以上の同種造血幹細胞移植、50例以上のHLA半合致移植を望めると考えられる。また、過去からの検体を合わせて、全体で200例以上の症例の蓄積が期待できる。(1)生着症候群、移植片対宿主病、ハプロイムノストーム、血球貪食症候群発症時の診断法の確立:65人のPTCyハプロ移植で検討したところ、IL-6レベルが高い群で重篤なサイトカイン放出症候群の頻度高かった。また、その後のグレードIIIまたはIVの急性移植片対宿主病の発症に関連していた。現在投稿準備中である。(2)類洞閉塞症候群(SOS)の早期診断法の確立に関して、経直腸門脈シンチの有用性についてはBone Marrow Transplantation誌に成果を発表した。バイオマーカーの包括的評価については現在201例蓄積している。(3)移植後免疫再構築の評価に関して110例で結果を解析中である。(4)症例特異腫瘍抗原の決定と移植前後の微少残存病変の評価法の確立に関して、非寛解症例における移植前WT1の生存率への影響をTransplantation誌に発表し、β2microgloburinに関しては288例で解析中である。微少残存病変の評価法は191例でさらに症例蓄積中である。
同種造血幹細胞移植、HLA半合致移植を今まで通り実施し、患者のインフォームドコンセントをえて、検体を収集する。移植後免疫再構築の評価については集積したデータを解析し、論文化する。類洞閉塞症候群のバイオマーカー包括的評価については集積したデータを解析し、論文化する。症例特異腫瘍抗原の決定と移植前後の微少残存病変(MRD)の評価法の確立のために、今までどおり初発および再発時の急性白血病は寛解導入療法前にマルチカラーフローサイトメトリーにより急性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病のMRD評価のためのパネル抗体を用いて10種類の表面抗原を同時に測定し、個々の白血病細胞特異的な抗原パターンの同定を行う。移植後30、60、90、180、365日の病状を評価時、免疫抑制剤の中止後やドナーリンパ球輸注後に骨髄液にてMRDを測定する。さらに全生存、再発率、非移植関連死亡などを他の同種移植における予後因子とともに、Cox比例ハザードモデルやFine-Gray比例ハザード回帰によって解析する。転座遺伝子転写産物の量と表面抗原解析でのMRD量との相関については、MRDの割合を連続変数として用い、転座遺伝子転写産物の量の相関をスピアマンの順位相関係数、ケンドールの順位相関係数など用いて評価する。さらに、前処置治療前、幹細胞移植前、白血球生着時期、移植後30日、60日、100日、生着症候群、急性および慢性GVHD、ハプロイムノストーム発症時、PTCYハプロ移植ではさらに移植後0、1、3、5、7、14、21日の血清または血漿中のサイトカイン、マイクロRNAの解析を行う。
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Transplantation
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10.1097/TP.0000000000002662
Bone Marrow Transplantation
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/