研究実績の概要 |
造血系マスター転写因子PU.1は、その発現低下によりAML等の造血器腫瘍病態に中心的に係ることが判明している。研究代表者のグループはこれまで独自に、PU.1発現低下に伴うメタロチオネイン(MT)遺伝子の発現上昇(Imoto et al., 2010 JBC)と、Signal regulatory protein (SIRP) αの発現低下(Iseki et al., 2012 IJMM)、AML検体におけるFLT3との逆相関(Inomata. et al., Leuk. Res., 2006)を明らかにしている。造血器腫瘍病態解明のため、まずMT遺伝子を導入し作製したNB4(急性前骨髄球性白血病) MT過剰発現細胞を用いて、解析をしたところ、MTが、全トランス型レチノイン酸の分化誘導効果を著しく阻害することを見出した(Hirako et al., 2014 PLOS ONE)。平成29年度の解析で、MTの単球系分化における役割を検討したところ、顆粒球系(Hirako et al)とは異なり、明らかな影響はないことが判明した。平成30年度は、SIRPαについて解析を行い、SIRPα低下細胞は低血清培養下で増殖異常を引き起こすことを確認した(高渕ら、日本検査血液学会東北支部総会、2018年6月)。このような知見を含め、SIRPαとがんについての総説をまとめた(Takahashi S, Biomed Rep, Jul;9(1):3-7, 2018)。さらに平成30年度はFLT3受容体下流シグナル解析を行い、FLT3変異型細胞はチェックポイントキナーゼ1阻害剤、AZD7762に対して極めて高い細胞増殖抑制効果があることを見出した(近藤ら、FLT3変異型白血病細胞に対するCHK阻害剤AZD7762の高い細胞増殖抑制効果、第51回日本臨床検査医学会東北支部総会、2019年7月発表予定)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MTの機能解析に関しては平成29年度の報告書の通りであり、平成30年度はSIRPαの機能解析を中心に解析を進めた。また、平成29年の研究実施報告書に記載した通り、AML病態解析の上で重要なPU.1関連遺伝子(Inomata M et al., Leuk. Res., Jun 30:(6): 659-54, 2006)としてFLT3にも着目している。平成30年度からは、FLT3野生型および変異型シグナル下流の特徴を明らかにするため、キナーゼ阻害剤ライブラリーを用いてFLT3変異シグナル特異的阻害剤の同定に取り組んでいる。
|