研究実績の概要 |
造血系マスター転写因子PU.1は、その発現低下によりAML等の造血器腫瘍病態に中心的に係ることが判明している。研究代表者のグループはこれまで独自に、 PU.1発現低下に伴うメタロチオネイン(MT)遺伝子の発現上昇(Imoto et al., 2010 JBC)や、AML検体におけるFLT3との逆相関(Inomata. et al., Leuk. Res., 2006)を明らかにしている。本課題では独自に同定したこれらPU.1標的遺伝子の解析を進め、これまでの4年間で、MTは顆粒球系(Hirako et al., 2014 PLOS ONE)とは異なり、単球分化では影響に乏しいこと、SIRPα低下細胞は低血清培養下で増殖異常を引き起こすこと(高渕ら、日本検査血液学会東北支部総会、2018年6月、Journal of Molecular Signaling誌投稿中)、SIRPαのがんにおける役割をまとめ(Takahashi S, Biomed Rep, Jul;9(1):3- 7, 2018)発表した。さらにMTの各種抗癌剤に対する効果について検討を行った結果、代表的な抗がん剤であるAra-Cに関しては、MT過剰発現細胞における50%有効濃度(ED50)の1.2から1.5倍程度の上昇が認められた。また、その機序として、活性酸素を定量したところ、MT過剰発現細胞において、Ara-C添加後の活性酸素の上昇が抑制されている可能性が明らかになった。MTの細胞増殖における役割について解析を行った結果、血清欠如により細胞周期を同期させ、血清添加を行うと、MT過剰発現細胞におけるS期割合の増加が、コントロール細胞に比べ、増加していることが判明した。その状態で、サイクリン関連遺伝子の発現を検討すると、やはりG1/S期移行に関与するCyclin A, Eの発現が血清添加20-24h以降に増加していることが明らかになった(Annals of Clinical and Laboratory Science, 2021 51:38-43) 。
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