研究実績の概要 |
1)カルバペネム非感受性株の耐性遺伝子解析、それらのプラスミド解析を実施した。臨床検査現場では、カルバペネム非感受性株には、MCIM法でカルバペネマーゼ産生、SMA法でメタロβラクタマーゼ産生を評価し、CPE (Carbapenemase producing Enterobacteriaceae)との判定・報告の根拠とした。カルバペネマーゼ遺伝子は、IMP1, IMP7, KPC1, NDM1, OXA48をPCRにより検出を試みた。MCIM陰性、SMA陰性株からは上記遺伝子は検出されなかった。MCIM陽性株のすべてがSMA陽性であり、それらからはIMP1またはIMP7遺伝子の保有が明らかとなった。KPC1, NDM1, OXA48遺伝子は検出されなかった。当院では、10年前よりIMP1保有のEnterobacter cloacae, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytocaが断続的に検出されており、その間にIMP1陽性のE. cloacaeが分離された患者から、一定期間の後にIMP1陽性のCitrobacter freundiiが分離された例、IMP1保有E. cloacaeが分離された患者からその後にIMP1保有K. pneumoniaeが分離された例を認めたため、遺伝子の水平伝播の可能性を検討した。 2) 小児尿路感染症由来の第3世代セファロスポリン耐性大腸菌のESBL遺伝子の同定と感受性パターンとの関連を検討した。ESBL遺伝子として、CTX-M type geneが分離された。塩基配列決定の結果、CTX-M3 LikeとCTX-M14Likeであることが明らかとなった。 3) 8年前から分離されたAcinetobacter属全株を検討した。本属のなか、A.baumanniiがヒトに対して侵襲性が高いことから、OXA51 遺伝子の存在解析による遺伝学的な同定を行った。カルバペネム耐性については、OXA23、OXA28、OXA58、OXA51上流領域のIS配列、メタロβラクタマーゼ遺伝子の存在を検討した。OXA23, OXA51上流のISが認められたもの、およびNDM1遺伝子が認められたものがあったが、カルバペネマーゼ遺伝子の同定に至らなかった株も多かった。
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