研究課題
難治性造血障害である骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes; MDS)では、急性骨髄性白血病への移行が生命予後を大きく左右する。本研究の契機となったMDS患者由来細胞株MDS92を継代中に、8つの亜株を樹立することができた。MDS92とその亜株は、MDSから急性白血病への流れをインビトロで再現した培養細胞モデルのラインアップである。これらの細胞株と、発端となったMDS患者骨髄細胞を用いた全エクソームの比較解析によって、病型進展に関わる遺伝子変異を探索し、MDSの病型移行・病態悪化の分子機構の一端を解明し、それを阻止する新しい治療戦略への道を開くことが本研究の目的であり、継続的に取り組んできた。これまでの解析の結果、元のMDS患者骨髄細胞にはTP53変異に加えて約9%の分画にCEBPA変異が検出された。この骨髄細胞をインビトロにて培養中にN-RAS変異が付加され、MDS92細胞株の樹立へつながったと推定された。またMDS92からMDS-Lへ移行する段階で、小児脳腫瘍の領域でドライバー変異として有名なHistone1H3C 変異(K27M)が見出されたが、Histone1H3C 変異(K27M)クローンの拡大はIL-3依存性であり、IL-3非存在下では同変異を有するクローンが縮小し、同変異のないクローンが存続することが再現性をもって確認された。この結果から、ドライバー変異を獲得した異常クローンといえども、増殖・拡大するためには至適な骨髄環境要因が必要であることが示唆された。
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