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2019 年度 実施状況報告書

新規デバイスによる肺癌患者の血液中循環腫瘍細胞の同定

研究課題

研究課題/領域番号 17K09028
研究機関帝京大学

研究代表者

坂尾 幸則  帝京大学, 医学部, 教授 (00274605)

研究分担者 中西 速夫  愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 研究員 (20207830) [辞退]
谷田部 恭  国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90280809)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードCTC / 自動CTC分離・検出装置 / スライドグラス標本 / 細胞診 / 肺がん患者 / 肺静脈血 / Liquid Biopsy
研究実績の概要

1 新規CTC分離・検出装置の改良
本研究では3Dフィルターで捕捉したCTCをスライドグラスに転写し、CTCを光学顕微鏡で細胞診として判定できる新規自動分離検出装置を目指している。昨年度は部分自動化したCTC自動分離検出装置を試作した。本年度はさらに格子付きの3D 金属Filterとソフトな樹脂パッドの組み合わせにより、接触型でもダメージレスにCTCをスライドグラスに転写できる加圧式のCTC自動転写装置を試作した。これにより細胞診にとって極めて重要な細胞形態の良好な標本の作成が一応可能となった。これらの進捗によりCTCの分離からスライドグラス標本作成までの全工程をほぼ自動的に作成できるCTC自動分離・転写装置(試作機3号機)の作製を概ね達成した。
2 改良型検出デバイスを用いた肺癌におけるCTCの臨床的意義
1昨年度はマーカーフリーで形態を詳細に評価可能な本デバイスの特徴を生かして、肺動脈血中の大量巨核球の検出を報告した。本年度は昨年度に引き続き、新たにStage I~IIIの肺がん患者23例の肺静脈(流出路)と末梢血のCTCを比較検討した。その結果、末梢血(52%、平均5個/10ml)に比べて、肺静脈血(83%、平均23個/10ml)において有意 (p<0.05)に多数のCTCを検出した。肺静脈血ではクラスター形成するCTCを多数検出した。
CTCのサイトケラチン-ワイド染色で末梢血、肺静脈血検体からの遺伝子解析についても予備的検討を行った。ピンポイントDNA抽出キットを用いることによりスライドグラス上の30-50個程度のCTCからDNAを抽出し、簡便なリルタイムPCR法でEGFR遺伝子解析が可能であることを明らにした。末梢血に比べてCTCクラスターの多い肺静脈血CTCはリキッドバオオプシーとして遺伝子解析ができる新たなソースとなりうる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

1 CTC検出デバイスの改良;
昨年度はCTC4連装自動分離装置について企業と共同して試作機を作製した。しかし、CTCを細胞診として光学顕微鏡で観察できるようにするにはさらにCTCを細胞形態を保持したままスライドグラスにダメージレスに転写できる装置の開発が必須である。そこで今年度は転写時の面圧を最小限にできる樹脂製パッドを先端部に装着した接触加圧式のCTC自動転写装置 (試作機3号機の付属機)を作製した。培養肺癌細胞を用いたSpike実験と少数の臨床検体を用いた小規模臨床試験によりCTCのスライドグラスへの自動転写を確認したが、接触加圧による軽度の細胞変形が生ずることも新たな課題として明らかになったため達成度は概ね80%程度と考える。
2 肺癌におけるCTCの臨床的意義の予備的検討;
昨年度に引き続き、さらに約23例の肺がん患者血液検体(肺静脈血及び末梢血)を用いてCTCの臨床的意義の検討を行った。その結果、肺静脈血は末梢血に比べて優位にCTC数が多く、しかもクラスターが多いことから遺伝子解析のできる新たなリキッドバオオプシーとなりうる可能性が示唆された。実際、スライドグラス上の50個程度の肺がん細胞から簡便なリアルタイムPCR法 (Cycleave法)でEGFR変異の解析が可能であった。以上、臨床的意義の解析については達成度は概ね70%程度と考える。

今後の研究の推進方策

上記した自動転写デバイス及びCTCの遺伝子解析など、研究上の残された課題を達成するため、以下のように研究計画を変更し、1年間の延長を希望する。
1 CTC検出デバイスのさらなる改良;
加圧法によるCTCのスライドグラスへの自動転写装置を試作したが、加圧では軽度ながら細胞に変形が生ずる課題が残るため、非接触型でAir噴射式の自動転写装置を新たに試作し、加圧式デバイスと性能を比較検討する。新しい噴射式の自動転写装置で良好な細胞形態の保存と高い回収率が得られれば、理論的にはCTCを細胞診として病院内で検査できるようになり、実用化に向けた可能性が開けてくる。
2 肺癌におけるCTCの臨床的意義の検討;
末梢血並びに肺静脈血CTCの臨床的意義については今後さらに症例数を増やして、病期や転移との関連性、予後との関連性、さらに治療効果予測などの点について臨床的な解析を進める。またCTCの遺伝子解析に関しては、第1段階としてまとまったCTC数を回収できる肺静脈血CTCを用いてEGFR変異について切除標本とCTCからの検出遺伝子の整合性などを検索してゆく予定である。また従来のリアルタイムPCR法のみではなく、デジタルPCR法などより高感度な検出法についても検討してゆく予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究責任者の異動に伴い、検体採取が遅れております。もう少し検体を集めて解析したいと考えています。

主には1)検体採取(保存液)と保管および検討の送付代金2)論文化と学会発表のための費用です

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Dynamics of circulating tumor cells early after targeting therapy to human EGFR-mutated lung cancers and HER2 gene-amplified gastric cancers in mice.2019

    • 著者名/発表者名
      Ito A, Nakanishi H, Yoshimura M, Ito S, Sakao Y, Kodera Y, Yatabe Y, Kaneda N.
    • 雑誌名

      Anticancer Res

      巻: 39 ページ: 4811-4720

    • DOI

      10.21873

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 血中循環がん細胞(CTC)を光学顕微鏡で検出できるCTC完全自動分離・染色システムの開発と臨床応用2020

    • 著者名/発表者名
      中西速夫、吉村真弓、筒山将之、岩田広治、坂尾幸則、松下和博
    • 学会等名
      第4回Liquid Biopsy研究会
  • [学会発表] Clinical study on CTC for GI tract , lung and breast cancer patients using a new cytology-based automated platform 「新規血中循環癌細胞(CTC) 自動細胞診標本作成装置の開発と消化器癌、肺癌, 乳癌CTCの臨床的検討」2019

    • 著者名/発表者名
      H. Nakanishi, H. Kuroda, H. Iwata, Y. Yatabe, S. Ito, Y. Sakao
    • 学会等名
      第78回日本癌学会総会

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公開日: 2021-01-27  

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