研究課題/領域番号 |
17K09029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
笠原 諭 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30773056)
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研究分担者 |
高橋 美和子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 計測・線量評価部, 主幹研究員(任非) (00529183)
松平 浩 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (10302697)
岡 敬之 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60401064)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ADHD / 慢性疼痛 / SPECT / 前頭葉機能 |
研究実績の概要 |
ADHDを併存した慢性疼痛患者100名に対するADHD治療薬(メチルフェニデート and/or アトモキセチン)による薬物調整を完了し、治療前後におけるコナーズ成人ADHD評価尺度(Conners’Adult ADHD Rating Scales: CAARS)の自己記入式、観察者記入式の双方を実施した。約8割の患者においてADHD評価尺度に大きな改善が認められている。そしてADHD症状に改善の見られた患者においては、認知機能の改善とともにNumerical Rating Scale(NRS)で測定した疼痛症状や、Hospital Anxiety and Depression Scaleの不安・うつ等の気分症状、痛みの破局的認知Pain Catastrophizing Scaleにも有意な改善が認められた。 薬物調整を完了した40名の患者については、治療後のSPECT検査を実施完了している。薬物療法で治療効果の得られた患者においては脳血流にも改善がみられる傾向があり、1)前頭葉領域の血流低下が改善するパターンと、2)大脳皮質低血流/基底核高血流の不均衡が緩和するパターン、3)モザイク状の血流分布が平滑化するパターンが認められた。 研究分担者の異動などにより解析作用が遅延していたが、研究体制も整ったため、上記のADHD診断の有無、ADHD治療薬の効果・薬物反応性の結果と、脳SPECTのデータを合わせて(1)非ADHD群との比較を行うことで、ADHDを併存した慢性疼痛の早期診断指標を確立し、(2)治療効果と関連する脳血流パターンを同定することで、治療反応性(薬剤選択)の予測指標を確立し、(3)ADHD治療薬による鎮痛効果の脳内機序の解明に繋げられるようにする計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
核医学部門の専門家の異動があり、当院施設で予定していたPET検査が実施困難となっていたため。また、そのため既に得られていたSPECTデータの解析作業も遅延していた。
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今後の研究の推進方策 |
現在の当施設の状況ではPET検査が実施困難となっているが、臨床に直結して応用可能な内容に関してはSPECT研究でも十分意義のある研究成果になり得ると予想される。そこで、一般成人を対象としたADHD傾向と疼痛症状の関連性についてのネット疫学調査を行う計画に変更する予定である。我が国で本テーマに関する疫学調査は全く行われておらず、本ネット調査はADHDと痛みについて疫学的な病態理解につながり、また予防的観点、医療施策への提言・参考資料としても重要な研究成果となり得ると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、学会発表時の旅費が所属機関の出張費などで賄えていたため使用しなかったこと、PET検査が困難となり謝金が発生しなかったこと、人事異動の影響で解析作業の開始が遅延していたため、購入を予定していた画像保管用データサーバ、画像解析用Windowsコンピュータを購入していないためであり、今年度の解析に際してこれらの物品を購入する使用計画である。
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備考 |
【研究発表】 笠原 諭.「慢性疼痛患者におけるドパミン神経系機能障害の評価と治療 -ADHDと痛みの関連性について-」第3回疾患神経科学研究会 2018年 笠原 諭.「慢性疼痛の生物心理社会モデルによる俯瞰的評価と、臨床実践への展開」第18回日本脳脊髄液減少症研究会 2018年(招待講演)
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