申請者らは髄液中に起痒物質のBNPが上昇することにより、痒みが生じるとの仮説を提唱した。血液透析患者では体液過剰が頭蓋内圧を上昇させ、BNPの髄液中濃度も上昇して痒みが生じやすいと考え、頭蓋内圧とかゆみの程度、皮膚疾患のQOLとの相関について検討を行った。2022年度は2021年度にひき続き、研究参加者を増やすことに注力し、血液患者総数38名において検討を行った。髄液は視神経周囲のくも膜下腔にまで通じており、網膜は頭蓋内圧によって変化するため、網膜の視神経周囲の所見をトレースすることにより、頭蓋内圧を非侵襲的に測定することが可能となる。透析前後および翌日のかゆみ(VAS)および透析前のQOLスコア(DLQI)により症状の程度を評価した。非侵襲的頭蓋内圧測定法として光干渉計により頭蓋内圧に関連するとされる視神経線維層(RNFL)厚などの網膜における視神経乳頭周囲のパラメーターとの相関を解析した。 透析前リム面積は対透析前VASにても有意な負の相関を示した。さらに対DLQIにおいても負の有意な相関がみとめられた。対透析後VASにても有意な負の相関がみられた。透析前視神経乳頭面積が透析翌日のVAS(Day2 VAS)と有意な負の相関がみられた。一方、透析前カップ体積がDLQIと有意な正の相関を示していた。リム面積とカップ体積では有意な相関がDLQIとみとめられるが、それぞれ相関の方向は負・正である。両者の相関をみてみると有意な負の相関がみとめられた。同様の所見は両眼の平均Cup/Disk (C/D比)および垂直C/D比とDLQIが有意な正の相関を示した。頭蓋内圧が上昇すると、リム面積は減少、カップ体積は増加すると考えられる。実際の相関も良好に認められており、リム面積およびカップ体積はより鋭敏な指標であると考えられた。以上より透析患者の痒みと頭蓋内圧には関連があると示唆された。
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