研究課題/領域番号 |
17K09040
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
上窪 裕二 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80509670)
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研究分担者 |
冨永 光俊 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 先任准教授 (50468592)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Gタンパク質共役型受容体 / 膜タンパク質 / 掻痒 / 疼痛 / シナプス |
研究実績の概要 |
神経における情報伝達は、神経伝達物質という化学物質とその化学物質を特異的に認識し細胞内へと情報を伝達する受容体が関わっている。受容体は、活性化によってイオンを透過するイオンチャネル型受容体や細胞内で三量体Gタンパク質と相互作用しシグナル伝達を行うGタンパク質共役型受容体(G protein-coupled receptor、GPCR)などが知られている。神経系には多種多様なGPCRが発現しており、複雑な神経回路の形成や記憶・学習など機能の実現に関わっている。近年の膜タンパク質研究の発展に伴って様々なGPCRの構造と機能が明らかとなってきた。その結果から同種または異種のGPCR同士が二量体や多量体を形成することで機能的に相互作用し、複雑で高度な機能制御を実現していることが明らかにされつつある。本計画は、GPCR同士の相互作用による感覚伝達クロストークの生理的・分子的機構の解明とかゆみの神経伝達の制御を目指すものである。 痛みとかゆみの神経伝達に関与すると考えられるGPCR同士の相互作用について解明を行うために標的とするGPCRの誘導発現細胞株を用いて以下を実施した。(1)翻訳後蛍光標識法を用いたGPCRの複合体のライブイメージング解析。(2)時間分解フェルスター共鳴エネルギー移動(TR-FRET)法を用いたシグナル伝達解析。(3)中枢神経標本を用いたGPCR複合体の生化学的解析。その結果、神経伝達に関わる2種類のGPCRが複合体を形成し、その機能を調節し合うことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで研究代表者らは、神経伝達にかかわるGPCR同士の相互作用についての解析方法の確立を進めてきた。その結果、中枢神経系において代謝型グルタミン酸受容体(Metabotropic glutamate receptor 1, mGluR1)と代謝型ガンマ・アミノ酪酸受容体(GABAB受容体)が複合体の形成していることが明らかとなった。さらに誘導発現細胞株の解析からこれらのGPCRが細胞膜表面において4量体以上の巨大な複合体を形成している可能性が示された。各GPCRの下流のシグナルをTR-FRET法を応用したホモジニアスアッセイで評価した結果、mGluR1がGABAB受容体のシグナルと抑制し、GABAB受容体がmGluR1のシグナル伝達を増強することを明らかにした。 以上の結果をまとめ、国際誌上で発表を行った。しかしながら痛みとかゆみの神経伝達とこれらのGPCRの機能的相互作用の関係については未解明のままである。そこで現在は痛みとかゆみの神経伝達に注目し研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
痛みやかゆみの伝達にmGluR1とGABAB受容体の相互作用がどうかかわっているかについて検討を進める。そのため、末梢神経や脊髄後角におけるこれらのGPCRの相互作用について解析を行う。また人工抗体によるGPCRの標識と操作には技術的に時間が必要である可能性がある。そのため、核酸など別の分子ツールの導入を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の移転に伴い実験が停止した時期が続き、再開のための機器が必要となったため使用予定と差額が生じる結果となった。 発表予定であった日本薬理学会年会と日本生理学会大会のいずれも新型コロナウイルス蔓延の影響で誌上開催のみとなったため国内旅費の使用がなくなった。
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