| 研究実績の概要 |
変形性膝関節症（膝OA）は、関節運動や荷重などの機械刺激によって痛みが亢進する複雑な侵害性疼痛が特徴である。痛み刺激の長期暴露は、末梢から中枢にいたる痛覚伝達経路に可塑性を導くだけでなく、疼痛回避のための安易な不動化によって筋力低下や関節拘縮が進行し、不安や不快といった負の情動とともに難治性の慢性痛へ発展する。膝OA発症時の関節内組織や後根神経節（DRG）ニューロンにおける機械受容関連分子の発現変化と、より高位中枢である脳機構の関与を評価することは、治療標的としての適切さを検討するために重要と考える。そこで、SDラットあるいはC57BL/6マウスの片膝にMIAを注入して膝OAモデルを作製し、経時的な関節炎の成立評価と足底の機械刺激による異痛症、およびフットプリントの補足機器やトレッドミル機器による自動歩行解析で荷重時痛を検討した。いずれの動物種でも、MIA注入後3日目には関節炎が成立し、機械刺激に対する疼痛閾値と下り坂での運動能力や足底接地面積が、コントロール群と比較して有意に低下することがわかった。作成した膝OAモデル動物は最終行動評価時に、9.4テスラ小動物用高磁場MRI装置で脳画像を撮像した。その後、麻酔下に膝関節構成組織と支配神経のDRG（L3,4,5）を摘出し、機械作動性チャネルPiezo1とPiezo2のmRNAをRT-PCRで計測した。その結果、OAはその発現量に影響を与えず、チャネルの機能的修飾によって機械受容を増強することが示唆された。
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