痛み関連シナプス伝達可塑的変化に対する内因性ノルアドレナリンの意義の解明を目的とし、急性脳スライス標本における腕傍核-扁桃体中心核シナプス伝達および扁桃体ニューロン興奮性を記録・解析した。DBH-tTA-2A-Cre BAC Tg ラット孤束核にアデノ随伴ウイルスベクターによってCre依存的にチャネルロドプシンを発現させ、孤束核由来ノルアドレナリン神経終末からの内因性ノルアドレナリンの放出を誘導した。ノルアドレナリン神経終末の光活性化は腕傍核-扁桃体中心核興奮性シナプス伝達に顕著な影響を及ぼさなかったが、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の存在下にのみ短持続の影響が観察される例があり、ノルアドレナリンが、興奮性シナプス近傍ではなく細胞外に拡散的に遊離されるvolume transmission様式で放出されている可能性を支持するものであった。ノルアドレナリン神経線維ヴァリコシティの分布と腕傍核-扁桃体中心核シナプスの局在の解析が必要であると結論した。このように、内因性ノルアドレナリンの放出誘導の最適条件の検討が困難であったため、光遺伝学技術により腕傍核ニューロン終末を特異的に刺激して腕傍核-扁桃体中心核シナプス伝達を選択的に記録し、外因性ノルアドレナリンの作用とその受容体を解析した。これまでに報告されてきた腕傍核-扁桃体中心核シナプス伝達におけるノルアドレナリンの作用は、プレシナプスにおけるα2受容体によるシナプス伝達抑制であり、実際にα2受容体を介したその作用を確認することができたが、それ以外にノルアドレナリンによって外向き膜電流が生じる例が観察された。外向き電流の責任アドレナリン受容体はα2受容体以外であることが示唆されたが詳細は解析中であり、今後扁桃体中心核ニューロン発現アドレナリン受容体分布を局所ネットワーク内の役割と合わせて解析していく予定である。
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