研究課題/領域番号 |
17K09045
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
芦高 恵美子 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50291802)
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研究分担者 |
伊藤 誠二 大阪医科大学, 医学部, 客員教授 (80201325)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NIPSNAP1 / TRPV2 / 機械刺激 / ノシスタチン / 疼痛 / 後根神経節 / エーラス・ダンロス症候群 / テネイシンX |
研究実績の概要 |
疼痛制御ペプチド・ノシスタチンの結合分子であるNIPSNAP1が、Transient receptor potential V2 (TRPV2)チャネルと結合することを見出した。これまで、NIPSNAP1欠損細胞では、TRPV2アゴニストによる細胞内Ca2+濃度上昇が野生型細胞より亢進したことより、NIPSANP1はTRPV2のチャネル活性を抑制することを明らかにした。今年度は、NIPSNAP1とTRPV2との機械刺激応答制御、機械刺激応答閾値と後根神経節でTRPV2 mRNAの発現が低下しているエーラス・ダンロス症候群の原因遺伝子の1つであるテネイシンX欠損マウスの疼痛解析と神経線維応答解析を行った。 1.NIPSNAP1とTRPV2の機械刺激応答の制御:(1)後根神経節細胞に伸展による機械刺激を負荷したところ、細胞内Ca2+濃度上昇とERKとJNKのリン酸化上昇が見られた。TRPチャネル阻害剤は、伸展刺激による細胞内Ca2+濃度とERKリン酸化の上昇を抑制した。また、伸展刺激によるERKのリン酸はTRPV2アンタゴニストで抑制された。(2) NIPSNAP1欠損後根神経節細胞では、伸展刺激によりERKのリン酸上昇は野生型細胞と同程度であった。 2.機械刺激応答の個体解析:(1)テネイシンX欠損マウスでは、機械刺激に加え触覚刺激に対する疼痛閾値が低下した。(2)正弦波刺激による神経線維応答解析では、テネイシンX欠損マウスでは有髄神経の感受性が亢進していた。これらの結果より、テネイシンX欠損マウスの疼痛閾値低下は有髄神経の感受性亢進によることが示唆された。 3.開発したノシスタチンフォトアフィニティープローブを用いノシスタチン結合分子の存在を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感覚神経の細胞体である後根神経節細胞において、伸展による機械刺激応答系を確立した。伸展の機械刺激に対する応答制御へのTRPV2の関与を明らかにした。また、エーラス・ダンロス症候群の原因遺伝子の1つであるテネイシンX欠損マウスを用い、機械刺激に対する疼痛閾値と神経線維の関連を明らかにした。さらに、開発したノシスタチンフォトアフィニティープローブを用い結合分子の存在を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
NIPSNAP1によるTRPV2のCa2+流入の抑制に関わる制御機構の解析を進める。また、エーラス・ダンロス症候群の原因遺伝子の1つであるテネイシンX欠損マウスの機械刺激応答へのTRPV2とNIPSNAP1の関与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
機械刺激応答制御の解析に関して細胞レベルの解析を中心に行ったので、個体レベルの解析に必要なマウスの購入が予定より少なかったために次年度使用額が生じた。機械刺激応答制御の個体レベルの解析と、エーラス・ダンロス症候群の慢性痛とNIPSNAP1とTRPV2の関連に関してテネイシンX欠損マウスの薬理学的行動解析に使用する。
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