研究課題
疼痛制御ペプチド・ノシスタチンの結合分子としてNIPSNAP1を同定した。NIPSNAP1は機械刺激応答を担うTransient receptor potential V2 (TRPV2)と結合し、Ca2+流入を上昇させることを見出した。他方、線維筋痛症と類似した慢性痛が認められるエーラス・ダンロス症候群の原因遺伝子の一つであるテネイシンX欠損マウスにおいて、後根神経節でのTRPV2の発現上昇と機械刺激に対する閾値低下を見出した。本研究では、NIPSNAP1とTRPV2との相互作用のチャネル活性と機械刺激応答の制御、エーラス・ダンロス症候群の慢性痛に焦点をあて、機械刺激応答制御に基づく疼痛増強機構を解明する。(1)電気生理学的解析では、NIPSNAP1とTRPV2の共発現細胞では、Ca2+透過性が亢進した。しかし、NIPSNAP1欠損後根神経節細胞では、TRPV2によるCa2+濃度は抑制されず、上昇が促進された。今年度は、細胞膜のTRPV2について解析した結果、NIPSNAP1発現細胞では、細胞膜TRPV2が減少し、細胞膜への移行が抑制されている可能性が示唆された。(2)NIPSNAP1とTRPV2の結合ドメインに対するペプチドを合成し、NIPSNAP1とTRPV2共発現細胞へ導入し、結合阻害解析を行った。(3)エーラス・ダンロス症候群の原因遺伝子の一つであるテネイシンX欠損マウスにおいて、機械刺激応答閾値の低下に加え、有髄神経の応答過敏、脊髄の中枢性感作を明らかにした。今年度は、有髄神経の機能阻害を行い、機械刺激応答閾値の低下との関連を解析した。また、脊髄の中枢性感作に関して、神経細胞とグリア細胞について解析したところ、神経細胞が活性化していることが明らかになった。
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Sci Rep.
巻: 10 ページ: 6569
10.1038/s41598-020-63499-2
http://www.oit.ac.jp/bio/labo/~ashitaka/home.html