研究課題
前年度では、糖尿病性ニューロパチーの病態動物モデルの確立、モデル動物におけるAMPキナーゼの活性化低下、そしてモデル動物におけるAMPキナーゼとTRPチャネルの機能相関を確認できた。今年度では、こうした現象の行動薬理学的な裏付けや、電気生理学的手法を用いた細胞レベルでの解析に進み、具体的に下記の実験を行った。1)糖尿病性ニューロパチー病態モデル動物(DB/DBマウス)では4週齢以降体重の増加、血糖の上昇と疼痛過敏の相関が確認された。2)DB/DBマウスにおけるDRGニューロンに発現するAMPキナーゼ活性化の低下と疼痛過敏の相関が確認された。3)DB/DBマウスの有痛性症状(疼痛過敏)に対して、AMPキナーゼのactivatorおよびinhibitorをモデル動物の足底部または髄腔内に投与し、疼痛行動の閾値の変化を調べた。AMPキナーゼのactivatorの疼痛過敏への抑制効果が確認された。4)DRG急性単離細胞を用いた実験では、高グルコース培養液処置群は低グルコース培養液処置群に比べて、AITCに対するTRPA1チャネルの反応電流の増大が確認できた。これによって生体で確認できた現象の細胞機序をIn vitroにおいて証明できた。5)AMPキナーゼシグナルによるTRPチャネル機能調節の分子機構を解明するため、パッチクランプ法を用いてTRPチャネル電流の大きさに、AMPキナーゼシグナルに関わるactivatorおよびinhibitorによる影響を調べた。AMPキナーゼの活性化はTRPA1チャネル電流を抑制することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度に実施予定であった病態モデル動物を用いた行動薬理学的実験とIn vitroにおけるAMPKとTRPチャネルの機能相関解析などに関する実験が計画通りに進み、当初の計画通りデータ収集と解析ができた。
次年度は、計画通りTRPA1欠損するdb/dbマウスの作成し、糖尿病性ニューロパチーの発症におけるAMPKによるTRPA1調節の役割を解明する。また、AMPKの下流にある因子を同定し、TRPA1の膜内移行の分子的メカニズムを解明する。
本年度研究に必要な実験用品が節約できたため、わずかながら未使用額が生じた。未使用額は、次年度の実験用品の購入費用に充当する予定である。
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