本年度では、神経細胞内AMPKの下流シグナルNedd4-2に着目し、糖尿病性ニューロパチーにおける疼痛過敏の発症機序を検討した。一方、TRPA1欠損するdb/dbマウスの作成を試みたが、成功に至らなかった。 糖尿病性ニューロパチーにおけるAMPKの関与機序を検討するため、我々はまず、その下流シグナル分子のNedd4-2を着目した。AMPK活性化による糖尿病性機械刺激過敏(アロディニア)の緩和作用がNedd4-2の阻害剤により抑制されることを確認した。そのうえ、Nedd4-2の活性化はアロディニアを抑制することを明らかにした。また、DRGにおけるNedd4-2の発現がm/mマウスに比べてdb/dbマウスでは低下していること、この低下はAMPKの活性化処置(メトフォルミンやAICARの長期投与)によって改善されることが確認された。 つぎに、糖尿病性機械刺激過敏の発症におけるNedd4-2の関与機序を解析するために、後根神経節(DRG)ニューロンにおけるNedd4-2とTRPPA1チャネルの共存率を検討した。小型ニューロンに発現するNedd4-2はTRPA1チャネルと高い共存率を示した。さらに、正常マウスのDRGニューロンにおいてTRPA1はNedd4-2によってユビキチン化されることが確認し、このユビキチンはdb/dbマウスにおいて減弱されることを突き止めた。 In vitroの実験では、Nedd4-2を過量強制発現させたHEK細胞において、TRPA1の電流抑制が観察された。また、高グルコース条件下の培養DRGニューロンにおいて、Nedd4-2の膜移行が確認され、この移行はAMPKの活性化によって抑制されることを明らかにした。 現在、3年間の研究成果をまとめて、論文投稿を準備している。
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