研究課題/領域番号 |
17K09050
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
右田 啓介 福岡大学, 薬学部, 准教授 (10352262)
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研究分担者 |
松本 太一 福岡大学, 薬学部, 助教 (80570803)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 線維筋痛症 / 前帯状回 / P2X7受容体 |
研究実績の概要 |
本研究は、線維筋痛症における前帯状回を中心とした機能的変化の機序解明および治療薬開発に貢献することを目的としている。そこで、線維筋痛症モデルマウスを作製し、脳内疼痛関連領域の検討および疼痛評価を行った。線維筋痛症モデルマウスは、反復低温トレス負荷(Repeated cold stress, RCS)によるものと、酸性生理食塩水(pH 4.0)の腓腹筋投与(Unilateral gastrocnemius injection with acidic saline, UGIAS)による2タイプのモデルマウスを作製し、また、比較のために坐骨神経部分結紮モデルマウス(Partial sciatic nerve ligation, PSNL)を作製した。作製したモデルマウスは、von Frey法により疼痛評価を行った。PSNLマウスでは手術後3日から28日以上痛覚異常が持続するが、RCSおよびUGIASマウスでは、作製後3日には痛覚異常が生じていたが、7日後には痛覚異常がほとんど見られなくなった。次に、RCSの脳の活性化部位を調べるために、RCSおよびPSNLマウスの脳を取り出し、c-fosタンパク質の免疫染色を行なった。その結果、前頭前野、視床などのストレスや痛覚関連領域でc-fosタンパク質の発現が見られた。特に前頭前野領域は、RCSマウスで発現が多かった。 一方、P2X7受容体のC末に特異的に存在するアミノ酸配列部分が疼痛に対して効果を示すかについて検討するために、最初に、培養神経細胞のPC12細胞に対するC末配列の影響について調べた。C末配列をpcDNA3.1に組み込み、PC12細胞に過剰発現させ、PC12細胞の生存について検討を行った結果、PC12細胞の細胞数に顕著な変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、線維筋痛症モデル動物における脳内の機能的変化を解析し、P2X7受容体のC末に特異的に存在するシステインが豊富なアミノ酸配列部分がHSP90をトラップすることで疼痛を抑制できるかについて検討することを目的としている。線維筋痛症モデルマウスは、反復低温トレス負荷によるものと、酸性生理食塩水(pH 4.0)の腓腹筋投与による2タイプのモデルマウスを用いているが、現在、両モデルマウス共に長期の疼痛を発症していない。そこで、反復低温トレス負荷による脳内の影響について、免疫染色法を用いて解析を行っている。しかしながら、反復低温トレス負荷の方法を改良し疼痛が長期に観察されるようにしていく予定である。一方、P2X7受容体のC末に特異的な配列をpcDNA3.1ベクターに組み込み、PC12細胞に過剰発現させ、PC12細胞の生存に対する影響を検討した。現在は、PC12細胞の生存への影響は見られていない。そこで、C末配列がどのぐらいPC12細胞に発現しているかについて検討するために、C末配列に対する抗体を作製した。しかしながら、作製した抗体で発現が確認できていない。P2X7受容体を発現させても作製した抗体による染色像が確認できないことから、C末配列に対する抗体を再度作成する必要が出てきた。抗体が正確に作用することが確認できれば、HSP90と結合するかについて免疫沈降を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に引き続き、反復低温トレス負荷および酸性生理食塩水(pH 4.0)の腓腹筋投与による2タイプのモデルマウスの全脳に対するc-fos発現を観察する。その後、両モデルマウスの帯状回や島皮質におけるシナプスのマーカーであるシナプシンや、神経新生のマーカーであるダブルコルチンの発現について検討を加える。さらに、線維筋痛症モデルマウスの中脳水道周囲灰白質に蛍光トレーサーを注入し、帯状回や島皮質との神経連絡の変化について検討を加える。また、P2X7受容体のC末に特異的に存在するアミノ酸配列の抗体を再度作製し、HSP90との結合の有無について免疫沈降を行う。場合によっては、C末配列を含むベクターを再構築する必要があるかもしれない。PC12細胞を用いてC末配列部分の発現およびHSP90やその他の細胞内タンパク質との相互作用を明らかにする。その後、線維筋痛症モデルマウスへC末配列のベクターを脳内に投与し行動評価およびc-fos発現等の免疫染色法を用いた検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に論文を投稿するための費用としてとっておいたが、英文校正に時間がかかり持ち越すこととなったため。
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