研究実績の概要 |
本研究は、線維筋痛症における前帯状回を中心とした機能的変化の機序解明および治療薬開発に貢献することを目的としている。昨年度に、免疫組織化学的手法を用いて、線維筋痛症のモデル動物の一つである反復低温ストレス負荷(Repeated cold stress, RCS)マウスの前辺縁皮質におけるc-fosタンパク質の発現を確認した。しかしながら、von Frey法によるRCSマウスの疼痛評価では、持続した強い疼痛反応は見られなかった。そこで、本年度は、RCSマウスと異なる社会ストレスモデルマウスを作製して、疼痛および前辺縁皮質におけるc-fosタンパク質の発現について検討を行った。モデルマウスは、雄性および雌性ICRマウスを10分間Wistar系雄性ラットと同じケージに入れ、その後ラットとマウスを金網で隔て一晩飼育して作製した。疼痛評価およびc-fosタンパク質の発現についての検討は、ストレスを与えて3日および1週間後に行った。その結果、雄性および雌性マウス共に、ストレス後3日および1週間後の痛覚異常が確認された。また、雄性および雌性マウスの前辺縁皮質におけるc-fosタンパク質の発現も、3日および1週モデルマウスで観察された。 以上のように、酸性生理食塩水の腓腹筋投与モデル、RCSモデルおよび社会ストレスモデルの疼痛およびc-fosタンパク質の前辺縁皮質における発現の比較検討を行なったが、線維筋痛症の病態解明には、今後、酸性生理食塩水投与や冷温刺激、あるいは社会ストレスを複合的に組み合わせたモデル動物を作製し検討する必要があると思われる。
|