慢性疼痛は中枢神経系の可塑的変化によって生じる病態であり、触刺激に対して痛みを感じたり(アロディニア)、痛みに対する感受性が増強する(痛覚過敏)。疼痛関連領域の一つである一次体性感覚野(S1)では、神経活動・シナプス構造が劇的に変化することで疼痛が生じるため、触応答回路と痛み応答回路の混線や、痛み応答回路の可塑的変化が疼痛発生に寄与すると考えた。そこで、本課題では、2光子顕微鏡を用いたin vivoカルシウムイメージングによりS1神経細胞活動を可視化し、正常時に触刺激に応答する細胞と痛み刺激に応答する細胞の活動が慢性疼痛時に触刺激、痛覚刺激でどのように変化するかを明らかにし、また、触・痛み応答細胞活動をそれぞれ抑制し疼痛行動への影響を調べ、アロディニアと痛覚過敏の脳内発生機構を明らかにすることを目的とし、研究を行った。2019年度は、触刺激、温熱痛み刺激を用いて正常マウスのS1神経細胞活動を計測した。温熱痛み刺激はペルチェ素子を用いて温度を変化させることで行った。S1神経細胞は触刺激、温熱痛み刺激に応答した。触刺激に比べ温熱痛み刺激では多くの細胞が応答した。また、触刺激に応答数細胞は一部痛み刺激でも応答した。慢性疼痛での神経活動は測定系の問題でまだ実現できていないため、慢性疼痛で触、痛み応答細胞の応答がどのように変化するかは今後明らかにする。
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