側頭葉てんかん患者7名および脳疾患患者23名に対して、神経伝達速度や髄鞘化の指標として用いられているMR g-ratioの算出および画像化を行った。撮像法は、昨年度までに用いた、ミエリンを画像化できるMTsaturation(MTsat)法と軸索を画像化するNODDI法である。各患者において交叉線維を描出可能なQ-ball imaging tractographyで描出した錐体路を元に、ROI計測を行い、健常人と同じ傾向(錐体路における有意な左右差がないこと)が得られるか、また脳腫瘍患者において、どのような特徴があるかを調査した。 錐体路tractography描出の条件検討内容に関して、第47回日本磁気共鳴医学会大会にてポスター発表し報告した。 側頭葉てんかん患者に関して、MR g-ratioおよびそれに付随して得られる定量値(MVF; ミエリン容積比とAVF; 軸索容積比)のいずれにおいても健常人と同様に左右差は生じなかった。 脳疾患患者の内、錐体路近傍に疾患がない患者(21名)に関しても、g-ratioおよびそれに付随して得られる定量値のいずれにおいても左右差は生じなかった。 疾患における特徴として、2名と症例は少ないが、膠芽腫患者において、健側白質に比較して、腫瘍近傍のMVF低下とAVF上昇、それに伴ったg-ratioの増加が得られた。このことから腫瘍によるミエリン損傷、MVF低下の可能性が示唆された。また腫瘍近傍に浮腫を伴った症例で、健側白質に比べMVFおよびAVFの顕著な低下を認めたが、低下の程度によりg-ratioが健側に比べ大きくなることも小さくなることもあり、更なる検証が必要であった。術前術後での比較を2名(側頭葉退成性星細胞腫、退形成性乏突起膠腫)で行った。健側の定量値は手術前後で安定していたが、これに関しても症例数が少ないため今後、症例の積み重ねが必要である。
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