研究課題/領域番号 |
17K09059
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大久保 真樹 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10203738)
|
研究分担者 |
成田 啓廣 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10770208)
和田 真一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80105519)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | X線CT装置 / 変調伝達関数(MTF) / 点広がり関数(PSF) / スライス感度分布(SSP) / 空間分解能 / 肺がん / CT検診 |
研究実績の概要 |
今年度は、まず複数のCT装置における点広がり関数(Point Spread Function:PSF)とスライス感度分布(Slice Sensitivity Profile:SSP)の測定を行った。精度の高いVirtual Noduleの生成には、PSFとSSPの精度が重要となってくる。特にPSFは、画像再構成関数の特性によっては精度の高い測定が難しい場合がある。そこで、我々の研究グループで開発した精度検証を伴うPSF測定法を用いた。これにより信頼性の高いPSFを得ることができた。次に、PSFとSSPを用いた逆重畳積分により被写体関数を算出する数値計算法の基礎を確立した。逆重畳積分は計算が容易な空間周波数領域における除算(インバースフィルタ)を用い実行したが、数値計算における不安定性(発散)がみられた。そこで、窓関数(Hanning Window)を適用し演算結果の発散を抑えた。そして、低コントラスト球体ファントムおよび簡易的に作成した模擬結節ファントムを用い、異なる2台のCT装置(CT-1およびCT-2)で撮像を行った。装置CT-1で撮像したファントムの画像(I1)から被写体関数を算出し、異なるCT装置(CT-2)の画像と等価な空間分解能特性をもつ画像(I2)を生成した。被写体関数の算出にはCT-1のPSFとSSPを、I2の算出にはCT-2のPSFとSSPを用いた。生成された結節像I2と実際にCT-2を用いて撮影した画像とを比較した結果、よく一致することが定性的・定量的に確認された。逆重畳積分による被写体関数の算出、およびそれを基に算出したVirtual Noduleの妥当性が示唆された。 以上の検討を通し、考案するVirtual Noduleの生成法の基礎を確立することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画については順調な進捗状況である。ただし、本研究で想定していたCT画像はフィルタ補正逆投影(Filtered Back Projection:FBP)法により再構成が行われた画像(FBP画像)である。逐次近似再構成(Iterative Reconstruction:IR)法による画像(IR画像)は研究対象とはしていなかった。IR画像はFBP画像に比べCT検査における線量の低減が容易であることから、画期的な被曝低減手法として近年注目されている。特にこの1~2年で急速に臨床現場へ普及しており、本研究においても検討すべき対象と考える。 本研究で考案するVirtual Noduleは、CT装置のPSFおよびSSPを用いて算出される。従来のFBP画像におけるPSFとSSPは金属製の微小物体を用いて測定でき、信頼できる測定法が確立されている。一方、IR画像における空間分解能は被写体のCT値(コントラスト)に依存するため、PSFやSSPの測定では、従来の高いコントラストを持つ金属製の微小物体を用いる方法は適用できない。目的とする画像(被写体)と同等のコントラストを持つ物体を用いてPSFやSSPを測定する必要がある。 Virtual NoduleをIR画像に適用するためには、IR画像のPSFとSSPが必要である。IR画像における新たなPSFおよびSSPの測定法の開発が試みられているが、測定精度については検証されておらず、信頼性の高い確立した方法は存在しない。 以上の理由から、本研究計画にIR画像のPSFとSSPの測定法の考案が不可欠と考え、その検討を含めることとした。
|
今後の研究の推進方策 |
症例画像における様々な結節像を想定し、不整形で濃度が不均一な多様な人工結節を作成する。すりがらす状陰影(Ground Glass Opacity:GGO)や充実性結節等の形状や濃度(不均一性)などを再現できるように、人工結節の作成材料・素材や形成方法について検討する。それらの人工結節をCT撮像し症例における結節像に類似するものであるかについて評価する。次に、複数のCT装置(CT-1、CT-2、CT-3等)を用いて人工結節を撮像する。昨年度に開発したVirtual Nodule生成法を用いて、装置CT-1で撮影した結節像I1からCT-2で撮影した画像と等価な空間分解能特性をもつ結節像I2を生成する。この結節像と実際にCT-2を用いて撮影した画像(真の結節像)を比較しその精度を評価する。この検討を種々のCT装置の組合せや撮像・再構成条件(再構成関数やスライス厚等)を変えて行う。症例画像における様々な結節像を想定した場合でも、Virtual Noduleが実用的な生成精度と成りうるかを検証し手法の確立を目指す。 また、IR画像における空間分解能(PSFおよびSSP)の測定法について検討する。まずSSP測定法の考案を行う。従来のFBP画像におけるSSP測定法では金属製の薄い円盤状の被写体を用いる方法(コイン法)が一般に用いられている。しかし、被写体が金属製で非常に高いCT値コントラストを持つことから、IR画像のSSP測定には適用できない。そこで、コントラストの低い被写体(低コントラスト球体ファントム)を用いた新たなSSP決定法を考案する必要がある。我々の研究グループではこれまでに、球体ファントムを用いた逆重畳積分によるPSF決定法を開発してきた。このアルゴリズムをSSP決定法にも適用することにより、効率よく手法の開発が進められるものと考える。
|