本研究の目的は、脳PET検査において、4つの画像再構成アルゴリズムOSEM法、OSEM法にPSF分解能補正を組み込んだ方法 (OSEM+PSF法)、OSEM法にTOFを組み込んだ方法(OSEM+TOF法)、OSEM法にPSF分解能補正とTOFを組み込んだ方法(OSEM+PSF+TOF法)がフラクタル次元に与える影響を明らかにすることであった。4つの再構成アルゴリズムにおいて脳腫瘍の悪性度が高くなるほどフラクタル次元は小さくなった。脳メチオニンPETにおいて、フラクタル次元を用いて悪性度分類が可能か検証を行った。対象は、WHOの悪性度がGradeII:5名、GradeIII:17名、GradeIV:18名であった。GradeIIとGradeIV、GradeIIIとGradeIVに統計学的な差が認められた。しかしながら、GradeIIとGradeIIIには優位な差が認められなかった。その他の画像再構成アルゴリズムにおいては、すべてのGradeの組み合わせにおいて、優位な差が生じなかった。 次に,IDH1の変異に関連した神経膠腫の鑑別のため新たに神経膠腫と診断された患者における11CメチオニンPET画像から求められるSUV、T/N比、MTVおよびtotal lesion MET uptake (TLMU) と比較したフラクタル解析の有用性を評価した。低悪性度神経膠腫と神経膠芽腫の間でSUVとT / N比に有意差があった。MTVまたはTLMUではいずれにも有意差は無かった。低悪性度神経膠腫と高悪性度神経膠腫および神経膠芽腫の間で、フラクタル次元に有意差が得られた。本研究の結果は、新たに神経膠腫と診断された患者においてMET PETを使用したフラクタル次元が、SUVなど従来使用されている定量指標では不可能だったIDH1変異に関連して神経膠腫を鑑別できる可能性を示唆した。
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