研究課題/領域番号 |
17K09067
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
内山 良一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (50325172)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Radiogenomics / アルツハイマー型認知症 / コンピュータ支援診断 |
研究実績の概要 |
正常標準脳との差(Zスコアマップ)を利用して,脳萎縮の定量評価を行う手法の問題点は,次の2つである.(1)健常者の場合でも老化によって脳の生理的萎縮が起きる.病気による脳萎縮を正確に定量評価するためには,正常老化による脳萎縮を考慮した正常脳 を作成して利用することが望ましい.(2)脳の特定部位に関心領域を設定して脳萎縮を定量評価するため,調査する関心領域の分だけ多重性が発生し,多重検定補正が必要になる.よって,統計的有意差を得るには,かなり多くの症例数が必要である.これらの問題に対処するために,年代別の正常脳画像を主成分分析することで,正常老化による脳萎縮の空間的かつ時間的推移を固有空間上で表現する手法を提案した.提案法は,(1)年代別の正常脳を用いるため,正常老化による脳萎縮を考慮した定量評価を可能とする,(2)脳萎縮を低次元固有空間で表現するため,脳の特定部位に関心領域を設定する必要がない,という特長を持つ.本手法によって定量化した脳萎縮の程度を用いて,正常例とアルツハイマー型認知症(AD)の鑑別を行ったところ,60代の正常とAD ではROC曲線以下の面積(AUC)が0.911,70代の正常とAD では 0.874,80 代の正常とAD では0.824となり,有用な結果を得た.各年代の正常脳を主成分分析することによって,正常老化による脳萎縮の推移を固有空間上で表現したモデルを提案した.形成された固有空間は,「空間的」かつ「時間的」な脳萎縮の変化をモデル化したものである.本手法を用いることで,正常老化による脳の生理的萎縮を考慮しながら病気による脳萎縮を定量評価することが可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究成果によって,遺伝子型によって脳萎縮パターンが異なることが明らかになった.本年度は,脳萎縮パターンの違いを定量化する手法として,固有空間法を用いた時空間統計モデルによる手法を構築し,正常とアルツハイマー型認知症を鑑別するコンピュータ支援診断システムの試作機を構築した.よって,計画通りにおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子型に関係する画像所見の違いを発見する画像データマイニング法を開発する.これによって,遺伝型と画像表現型の関係性を網羅的に解析する手法の開発を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
他の助成金が取得できたため,予算残高が生じた.来年度は,国際学会で成果を発表する予定であるため,旅費で使用する予定である.
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