研究課題/領域番号 |
17K09068
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
山口 哲 岩手医科大学, 医学部, 助教 (10611006)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンデンサー積算型線量計 / 使い捨てUSB-A基板 / Si X線フォトダイオード / 放射線治療 / 皮膚線量モニタリング |
研究実績の概要 |
本年度は当初の計画どおりUSB-A基板タイプの小型コンデンサー線量計とパーソナルコンピューターに接続して測定を行うための測定Dockとソフトウェア開発を終了し、測定実験を実施した。開発した小型コンデンサー線量計を使用して①本大学の教養教育センター物理学科にある試験用X線管を使って照射時間依存性と管電圧依存性における基礎特性の測定と②臨床で使われている放射線治療装置リニアックによる測定をそれぞれ実施した。①のX線管を用いた基礎特性の測定成果については、2018年4月の日本医学物理学会にて発表したのち、公表したデータを論文としてまとめてRadiological Physics and Technologyの学術ジャーナル(査読付き)に投稿しており同年12月にアクセプトされている。②の放射線治療装置リニアックでは、基本照射条件と固体ファントムおよび熱ルミネッセンス線量計を用いた基礎検証実験と、臨床応用として放射線治療分野で主流となりつつある強度変調放射線治療(IMRT)での測定実験を特注の頭頚部ファントムを設計して実施している。リニアックの基本照射条件を用いた実験測定データについては2018年の11月にマレーシアで開催された国際学会(AOCMP)と2019年4月の日本医学物理学会にて発表済であり現在、論文にまとめて投稿準備を進めている。頭頚部ファントムを用いたIMRT測定に関してはその線量校正に際して放射線治療分野で絶対線量基準として使われているファーマ型電離箱と線量校正を行う必要があるため、小型コンデンサー線量計と相互校正を行える校正用の固体水ファントムを新たに考案して測定実験に使用した。IMRTによる測定実験もすでに本年度中に終了しており、当初の計画どおり論文にまとめて投稿準備を進めている。実験成果の一部は2019年9月に広島で開催される国際学会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に比べるとUSB-Aタイプの小型コンデンサー線量計および測定Dockとその関連ソフトウェア開発が前倒しで進んでいて、試験用X線管を使った基礎特性の測定と論文ができており、すでに査読付き学術ジャーナルに2編アクセプトされている。また、当初から予定していた放射線治療装置リニアックの測定に関しては、予定していた実験を本年度中に終了しており進捗状況は良好である。基準照射条件の基礎実験では基準線量計として使用した熱ルミネッセンス線量計よりも、コンデンサー線量計と測定Dockの方が比較的安価に製作できるにも関わらずデータのばらつき(標準偏差)が少ない結果を示しており放射線治療用に有用であることが確認できた。当初問題としていたリニアックとの線量校正方法については小型コンデンサー線量計校正用の固体水ファントムを考案したことで解決しており測定実験の結果も放射線治療分野で絶対線量基準として使われているファーマ電離箱と遜色のない結果が得られている。これらのリニアックから得られた実験データの一部に関してはすでに学会発表済で論文の投稿準備と並行して順次、学会発表を通して公表していく予定である。現在は広島での国際学会発表と2編の論文投稿の準備を進めている。1編目のリニアックによる基本照射条件を使った論文については今年リジェクトの通知が来たため問題個所を見直し再度、別の査読付きジャーナルに投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度アクセプトされたRadiological Physics and Technology学術ジャーナルの査読者から本研究で開発中の小型コンデンサー線量計についての強い関心がうかがえており、査読者のコメントに基づき、本線量計の角度依存性における追加実験を行う予定である。そのために詳細な角度依存性が評価できる実験器具を購入済で、その測定装置を組み立てて実験を行う準備を進めている。また、本線量計は研究過程の段階で、放射線治療装置リニアックのみならず、臨床で使われている診断用X線CT装置やIVRなどで使用されているコーンビームCT(CBCT)などでの線量測定も可能であることが判明しており、それらの医療機器との相互比較が簡便に行えるように医療用X線管に使えるRaySafe社の線量率計を購入する予定である。この線量率計を使うことで、本コンデンサー線量計の詳細な線量率依存性の評価も行うことができるため診断分野においても有用であることを証明し、角度依存性の測定実験と合わせて測定データをまとめて公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は初年度の平成29年度に予定していた国際学会の旅費分と本年度の論文校閲費用分である。初年度は線量計の開発に注力したため国際学会での発表は行わず、本年度はもともと予算として国際学会の旅費が計上されていて、それを使用したために、本旅費は次年度に持ち越しとなったが、次年度において新たに国際学会の演題発表がすでに決定しているため、その旅費分に使用する。また、本年度に計上していた論文校閲費用についても現在2編の英語論文を執筆中であり、その校閲費用として使用する計画である。また、次年度は今後の研究の推進方策にも述べているとおり、本研究で開発した線量計の研究をさらに推し進めるために校正基準となる線量率計を新たに購入する計画である。
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