本年度は昨年度までに開発したUSB-A基板タイプの小型コンデンサー線量計と測定端末を使って、放射線治療装置(リニアック)を使ったX線線量の基礎特性評価および、最新の放射線治療照射技術の一つである強度変調放射線治療(IMRT)での測定データをまとめて各学会での発表および論文投稿を実施した。リニアックを使った基礎特性評価では放射線治療用4~10MVのX線出力に対して測定線量はいずれも線形性のある応答が得られ、放射線治療用の積算線量計として実用可能であることを実証した。本実験成果は2019年4月の日本医学物理学会にて発表した。引き続き、本研究で目的としている患者皮膚線量のモニタリング計としての実現可能性を評価するために、特注の頭頚部ファントムと治療計画装置を使ってIMRT線量分布での測定実験を実施した。線量校正では現在放射線治療の基準線量計として使われているファーマ電離箱と本研究で開発した小型コンデンサー線量計との線量応答性が良く一致し、昨年度のX線管を使った線量測定結果と同様に、測定データのばらつきの指標である標準偏差が少なく積算線量計としての良好な線量特性が得られた。また、IMRTでの測定実験では治療計画装置でコンピュータシミュレーションされた頭頚部ファントム表面上での計算線量と小型コンデンサー線量計で測定した測定線量とは概ね20%未満の範囲内での相関性が得られている。本実験成果は現在論文投稿中である。本研究で新規に開発した小型コンデンサー線量計は安価で測定にケーブルを必要とせず、任意位置での線量測定が容易に可能であり、研究期間全体を通して、診断用X線管から放射線治療用X線までの幅広い用途での線量測定が可能であることが実証された。
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