研究課題/領域番号 |
17K09072
|
研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
林 慎一郎 広島国際大学, 保健医療学部, 准教授 (20238108)
|
研究分担者 |
高梨 宇宙 国立研究開発法人理化学研究所, イノベーション推進センター, 研究員 (40646692)
川村 拓 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (80424050)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 医学物理 / ゲル線量計 / 色素 / 光学CT / 三次元線量分布 / 放射線治療 / 品質保証 / 品質管理 |
研究実績の概要 |
2017年度は3次元色素ゲル線量計のための有望な組成の探索と最適化、および光学CTの開発改良を行ってきた。 これまで色素としてはトリフェニルメタン系のロイコクリスタルバイオレットやロイコマラカイトグリーンを中心に用い、応答感度や安定性の改良を中心に増感剤の影響等を調べてきた。本年度はより有望な色素の探索を行った結果、福井工業大学の砂川らにより報告されたポリビニルアルコール(PVA)とヨウ化カリウム(KI)、還元剤としてフルクトースを用いたPVA-KIゲルインジケータをもとに、ゲル化剤としてジェランガムを用いた系を開発し、放射線照射によって生成するポリヨウ素イオンとPVAにより形成される電荷移動錯体(PVA-I)の発色(赤色, λ=490nm)が高感度で安定性の良い応答を示すことを見いだした。また、この系は還元剤の働きにより加熱により消色することが出来るので繰り返し利用が可能であり、応答特性として1Gyから数百Gyにわたる広い領域で良い直線正を持つこと等が分かった。また、従来用いてきたハロゲン化酢酸などの増感剤が本系においても有効である事が分かった。これらの結果は、第20回ヨウ素学会シンポジウム(9/8-9,千葉市)、第8回日韓医学物理学会(9/15-17, Osaka)にて報告された。また、2018年度のIUPESM 2018 (6/3-8, Prague, Czech) にて報告予定である。 一方、光学CTの開発はやや難航している。均一に発色させたゲル線量計を用いた予備実験において、線量に依存して読み取り値の均一性が損なわれる現象が見いだされている。現在、様々な基礎特性を調べ直し、部品の改良と解析プログラムの見直しを行っている。また、これに合わせて、光学CTの普及と改良・開発を推進するため、『第2回簡易Optical CT講習会(9/2-3, 東京)』を開催した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
色素ゲル線量計の組成探索・最適化に関しては、様々な色素を探索する予定であったが、本研究の初期段階でPVA-I系色素の有用性が示されたことにより本年度はこの系を中心に実験を進めてきた。しかし、当初の予定であった幅広い色素の探索・検証がまだ十分に行えていない。 また、光学CTの開発においては、予測はされていたがデータ読み取り・データ処理の方法に困難が見られ、3次元読み取りまで行けなかった。 従って総合的に見るとやや遅れていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度に開発したポリビニルアルコールーヨウ素(PVA-I)ゲル線量計に関して、組成最適化の他、透明度の向上や作製手順など、まだ改良の余地が多分に残されているので、それらに関する実験を引き続き行う。また、初年度に十分できなかった、より有望な色素の探索も引き続き行う。 また、光学CTの開発に関してもゲル化剤とプローブ波長の最適な組合せや遅れているデータ読み取り手法、および3次元解析手法の構築を引き行う。 最終的には光学CTに最適化されたゲル線量計を用いて3次元線量分布評価のプロトコルを確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)まずひとつは、有望な色素を探索するため多様な色素(-数万円/種)を購入する予定であったが、探索初期で見いだしたPVA-Iが比較的良い特性を持っていたため主にその特性評価に重点を置いた実験を行った事が上げられる。そのため色素や機材の購入が遅れた。加えて、光学CTの開発において読み取り手法に困難が発生したため最適な部品の購入に至らなかった。これらの理由により次年度使用額が発生した。
(使用計画)H29年度に購入できなかった、各種色素やそれらに適した増感剤、および関連する試薬や器具を購入する。また、光学CTの読み出しやデータ処理の特性評価法の確立を進め、対応した部品を購入し、装置の作成を加速する。
|
備考 |
3次元ゲル線量計研究会活動含む
|