研究課題/領域番号 |
17K09080
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 道子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10593981)
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研究分担者 |
Dapat Clyde 東北大学, 医学系研究科, 講師 (10733826)
斉藤 繭子 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20598031)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エンテロウイルスD68型 / 血清抗体価 |
研究実績の概要 |
エンテロウイルスD68(EV-D68)はウイルス表面遺伝子の配列の違いにより3つのClade A、B、Cに分けられてきた。我々は動物への感染実験によって各Cladeの中和抗体は交差反応を示すことを報告した(J Virol. 2014 Mar;88(5))。これまでの研究報告ではClade Bは世界規模での流行を起こすことが知られているがClade Aは散発的な検出が多く、Clade Cはほとんど検出されない。近年Clade A はさらにもうひとつのClade Dに分かれることが報告され、ヨーロッパでは2018年の8月以降にClade Dのまとまった検出が報告された(Bal A, et al. Euro Surveill. 2019)。本研究ではEV-D68の血清抗体価をもとにEV-D68のCladeによる流行の違いや重症化の要因を検討することを目的としている。 2019年度は、2018年度の成果(日本での2015年のClade Bの流行前後での血清抗体の推移を 2014年から2016年の保存血清を用いて検討)を論文化し報告した(Jpn. J. Infect. Dis., 73, 55-57, 2020)。 また、これまでClade Aに分類されていたEV-D68の中で最初のClade Dは2008年に検出された株であった。その後Clade D 2012-2013年に検出され、2016年以降2018年まで毎年検出されていた。一方でClade A は2015年の2例を最後に2019年まで1例も検出されなかった。フィリピンでも同様の傾向で、Clade Aから派生したClade Dもまた毎年検出はされるものの散発的であった。Clade間における抗原性の相違の有無を検討する目的で、各Cladeのウイルスを細胞に接種し、2015年に採取されたClade B感染血清にて免疫染色をおこなったところ、Clade B >A > Dの順で染色性が弱くなったことから、Cladeによって何らかの違いがある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文投稿のための追加実験と新たなClade Dの遺伝子解析、抗原作成、中和抗体を客観的に判定するための免疫染色法の確立等に時間を要し、一方でフィリピンで採取した保存血清の抗体価の測定をおこなうことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの中和抗体は主にClade Bを用いて測定しており、一部Clade Aでも測定してきたが、今後はフィリピンでの保存血清を用いて、Clade Dも抗原に追加して中和法だけでなくELISA法による抗体測定もおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィリピンの保存血清を用いた抗体測定を次年度に持ち越したため、次年度は消耗品購入に使用予定。
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