研究課題/領域番号 |
17K09080
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 道子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10593981)
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研究分担者 |
Dapat Clyde 東北大学, 医学系研究科, 講師 (10733826)
斉藤 繭子 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20598031)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エンテロウイルスD68型 / 血清抗体価 / ELISA |
研究実績の概要 |
エンテロウイルスD68(EV-D68)はウイルス表面遺伝子の配列の違いによりClade A、B、Cの遺伝子型に分類され、近年Clade Aから派生したClade Dが報告された。 フィリピンではこれまでClade Bの流行が数年おきに認められ、Clade Dは散発的に流行している。本研究ではEV-D68の血清抗体価をもとにCladeによる流行の違いや重症化の要因を検討することを目的としている。 今年度はClade AとClade Dのウイルス全粒子を抗原としたELISAを構築し、フィリピンで2012年から2018年までに採取された5歳未満の小児血清444検体のIgG抗体を、EV-D68の感染の有無に関係なく測定した。EV-D68の流行後にはClade AとClade Dの両方の抗原に対する抗体が上昇していた。これはウイルス全粒子を抗原として用いたことによるClade間の交差反応と理解することができる。しかしながら、実際にClade Bに感染した小児ではClade Dの抗体価の上昇よりもClade Bの上昇がより大きかった。またフィリピンでは2014年と2015年にClade Bの比較的大きな流行が認められ、2014年の流行後と2015年の流行前に採取された血清の抗体価を比較したところ、流行前の抗体価は流行後よりも有意に低値を示した。これはEV-D68の感染によって一旦抗体を獲得するものの抗体価は徐々に低下し、集団での免疫が低下したところで次の流行が起こることが示唆された。 先行研究でフィリピンでEV-D68が検出された小児の年齢中央値は1.4歳で、中には生後1ヶ月で感染を認めた症例もあるが、生後6ヶ月未満での検出は全体の15%であったことから小児の月齢と抗体価の推移に着目した。その結果、生後2-3ヶ月の小児の抗体価が最も低値を示し移行抗体は生後数ヶ月で消失することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ELISA法による抗体測定が一通り終了した。現在はClade AとDの1歳以上の小児の中和抗体の測定を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
中和法による血清抗体は、まず1歳以上の血清で測定してきたが、今後は1歳未満の中和抗体も測定し、月齢によってどのような抗体価が推移するのかを解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行でフィリピンへの渡航が叶わず、検体輸送が滞ったことに加えて、研究室内でのコロナウイルスの検出系のセットアップに費やした時間が多かった。次年度は主に中和抗体測定および論文執筆をおこなう。
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