研究課題
肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy: HCM)は若年者突然死の原因として最も頻度が高い特発性心疾患であり、一部の症例は中年以降に左室収縮不全をきたす。HCMの約半数の症例では、病因となるサルコメア等の心筋構成蛋白をコードする遺伝子の変異が検出される。一方、左室収縮不全と内腔拡大を示す拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy: DCM)では、病因遺伝子変異が認められる症例は20%程度である。本研究では、DCM患者において、MYLK3遺伝子変異が検出される否か、さらに、検出された変異によって引き起こされる心筋の機能的変化を検討した。149例のDCM患者(男性:109例)において、MYLK3遺伝子変異の有無を解析した。手法としては、直接シークエンス法を施行した。結果、男性1例においてMYLK3遺伝子上の exon9、splicing acceptor部位に、一塩基変異(c. 1915 -1 g > t)を検出した。同変異が出現した結果、MYLK3のmRNAアミノ酸読取り枠にずれを生じ(out of flame)、mRNA上 にストップコドンが出現した。これによりMYLK3アミノ酸合成が翻訳の途中で停止し、酵素活性部位が途中から欠損した MYLK3が合成されると判明した(truncation mutation)。検出された遺伝子変異は、200例の正常対照群には認められないことを確認した。発端者については全エクソームシークエンス法も施行し、MYLK3遺伝子変異の他にはDCMの病因遺伝子変異を認めないことを確認した。引き続き、検出された変異に伴う機能解析を施行した。その結果、同変異によって、cMLCKのリン酸化活性が完全に喪失していることが解明された。本知見は、今後のDCM、および心不全治療薬開発研究の一助となることが期待される。
すべて 2019
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ESC Heart Fail.
巻: 6 ページ: 406-415
10.1002/ehf2.12410