研究課題/領域番号 |
17K09083
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤井 博 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (20596895)
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研究分担者 |
田嶋 敦 金沢大学, 医学系, 教授 (10396864)
川野 充弘 金沢大学, 附属病院, 講師 (20361983)
中村 裕之 金沢大学, 医学系, 教授 (30231476)
水島 伊知郎 金沢大学, 附属病院, 助教 (50645124)
山田 和徳 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (90397224) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 |
研究実績の概要 |
IgG4 関連疾患(IgG4-RD)は多臓器に炎症・腫瘤性病変を形成する全身性疾患である。発症要因にはアレルギー、悪性腫瘍、食事など環境要素の関連が報告されているが明らかではない。腎病変は無症候性に進行することが多く、受診時にすでに高度の腎不全に至っている症例がよく経験される。本研究では他大学との共同研究により、環境要素とIgG4-RD 発症の関連、潜在的な腎不全の原因としてのIgG4-RD が占める割合を明らかとする。これらの結果からIgG4-RDの病態解明、及び予防医学的介入に関する基礎知見の構築を目指す。これまでに能登地区で1344名、長崎五島地区においては2000名の地区住民の健康・疾病に関するデータベースを構築した。能登地区1327名の解析では、平均IgG4値は43.5mg/dl(2~256mg/dl)、IgG4高値は42名(3.2%)認められた。IgG4高値は男性に多い傾向があり、IgE高値が有意に相関した。IgG4値135mg/dl以上はe-GFR 77.9ml/ml、IgG4値 135mg/dl未満は83.7ml/minとIgG4値が高いと腎機能が低い傾向(p=0.135)が認められた。この内11例を精査した所、水腎症を伴う慢性腎臓病、動脈周囲炎、後腹膜線維症を合併した1例を認め、IgG4-RD疑診群と診断された。五島地区ではビーズアレイ法でIgG4を測定し、ネフェロメトリーによるIgG4換算値135mg/dl以上は2.6%であり、長崎県においてもIgG4高値はeGFR低下と相関する傾向が認められた。石川県一般人口におけるIgG4値はアレルギー素因、腎機能低下、男性と関連し、IgG4関連疾患の特徴と類似していた。また、石川と長崎でのIgG4高値例の比率は類似しており、本邦での地域差は少ないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス蔓延に伴い研究エフォートが十分とれなかったこと、また、一般住民を対象とした健康診断によるデータ収集が昨年度行えなかったことにより遅延している。二次精査のデータも受診控えの影響もあり、十分な受診データを収集できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
データベースの構築は、同一集団に対して長期的に行われる。コロナウィルス蔓延の終息後はIgG4高値症例データベース構築を継続し、IgG4 高値例について追跡調査を行う。これにより同一症例におけるIgG4 値の自然変動、および経過でIgG4-RD を発症するかどうかについても検討を行う。本研究のデータ構築の一部は 2013 年より行われており、能登地区、五島地区を併せて既に7年分、2000名を超えるIgG4 を含めた臨床検査値のデータベースが構築されている。個々の検診受診者と連絡可能な状態であり、今年度はIgG4受診者に追跡調査を行うことで無症候IgG4高値症例がIgG4関連疾患を発症するのかどうかの検討を行う。また、IgG4 高値が長期的なIgG4-RDの発症及び慢性腎臓病の発症リスクとなるかどうかの評価を行う。特に腎不全症例において、その腎不全の要因が何によるのかを明らかとすることにより、IgG4-RDが腎不全の直接の原因となっているのかを明らかとする。五島地区においても二次精査をすすめる。ビーズアレイとネフェロメトリーの相関については長崎大学のデータは完成しており、このデータを併せて、まずは横断的な結果を論文とする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス蔓延に伴いデータ収集ができなかったため経費を使用しなかった。論文作成のデータは収集されているため、今年度執筆費用として使用する予定である。
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