研究課題/領域番号 |
17K09088
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
林田 直美 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (00420638)
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研究分担者 |
前田 隆浩 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40284674)
山口 泉 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 客員研究員 (60783660) [辞退]
中尾 麻伊香 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10749724)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 一般成人 / のう胞 / 結節 / 頸動脈超音波検査 / 甲状腺 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、福島県の小児甲状腺検査で半数の受診者に見つかり、成人でも多く認められる甲状腺の「のう胞」や「結節」などの所見について研究を行う。地域の一般住民を対象として、甲状腺分野ではこれまであまり行われてこなかった縦断的な観察研究を行い、その自然経過を観察するとともに、影響を与える因子、特に、増大や新規発生に関連する因子を明らかにする。 今回の研究では、のう胞や結節の実態の解明を図り、福島県の甲状腺検査でのう胞や結節を認めた対象者の理解を深めるための判断材料を提供するとともに、今後の甲状腺検査の結果の還元に役立てることを目的とする。 住民健診を受診する40歳以上の一般住民を対象として、受診時に頚部超音波検査を行い、甲状腺の所見の有無を確認する。さらに、健診時の問診票より、対象者背景、生活習慣などに関する情報を収集するとともに、健診での血液検査結果も収集する。データの収集は、同じ対象者集団で研究期間内の年度ごとに繰り返し行い、縦断的に観察を行う。 収集したデータを用いて、①甲状腺所見の頻度とその特徴、②所見に関連する因子、③甲状腺所見の自然経過および関連する因子について検討し、甲状腺所見の本質を調査するとともに、良性所見に焦点を当て、その実態の解明を図る。 平成29年度は、住民基本健康診査を受ける地域住民約2,000名で、頸動脈超音波検査による動脈硬化検診時に発見される甲状腺所見頻度を検討し、のう胞を30%に、結節を20%に認めた。平成30年度は580名が研究に参加し、のう胞は29.8%、結節は13.3%に認めた。 引き続き、検診を継続し、のう胞や結節の自然経過を解析するとともに、個々の症例の詳細についても検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、頸動脈超音波検査による動脈硬化検診を受ける一般住民を対象として検査を継続している。 平成29年度は、2000例、平成30年度は580名の対象者を得ることができた。いずれの年度も、一般住民の成人でものう胞を約30%に、また、結節を10~20%に認めた。今後も検査を継続し対象者を収集するとともに、自然経過を見ることとしている。また、個別の症例について、対象者背景や血液検査と所見や自然経過との関連を詳細に検討するためのデータの収集は順調に進んでおり、研究は当初の計画通りにおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
同じ対象者集団に対し、以降も引き続き、年度ごとに同じ手順でデータの収集・分析を行う。 さらに、縦断的解析として、次の検討を加える。 ①のう胞および結節の自然経過(増大、縮小、不変、消失などの所見の変化)と新規発生の有無を観察する。 ②のう胞および結節の自然経過および新規発生の有無と対象者の背景因子、血液学的所見等との関連を検討する。 ③医療機関を紹介した場合の最終診断結果をもとに、悪性腫瘍についても同様の検討を行う。 以上の調査を通して、各年の所見頻度を統計学的に検討するとともに、血液検査、尿中ヨウ素との関連を検討し、さらには個人における所見の自然経過や全体の所見頻度の経年推移を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに収集したデータ量が多くなったため、データの入力および整理の補助として1名の人件費が発生した。そのため、年度末までの人件費の支出調整のために未使用額が生じた。2019年度も相当数のデータの収集が見込まれるため、引き続き雇用を継続する。また、次年度も継続してフィールドでの調査研究として、頸動脈超音波検査による動脈硬化検診を行い、甲状腺の画像を収集する。そのための交通費、旅費、研究対象者への説明用紙等の資料印刷費用および検査のための物品費等が必要である。 さらに、最終的には国際専門誌への論文の発表や学会発表を行う予定であり、論文執筆にかかる英文校閲料、投稿料及び学会旅費としても使用する予定である。
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