地震災害と静脈血栓症の発生に関してはマスメディアによって多く報道され社会問題になっており、われわれも車中泊の危険性についてはすでに報告している。(Sueta et al. Canadian Journal of Cardiology 34 (2018) 813.e9e813.e10)。近年災害高血圧という理論が提唱され、災害時のストレスや怠薬などにより血圧値が上昇し、各種心血管疾患が 増加するという概念であるが、その実態については明らかではない。 2016年4月14日に熊本地震2016が発生した。われわれは熊本県下16病院に2014年2015年2016年2017年の4月14日から6月30日(78日間)について各種心血管疾患(静脈血栓症、急性冠症候群、心不全、たこつぼ型心筋障害、不整脈)の発生率を調査した。結果、震災年である2016年において静脈血栓症は統計学的に有意に増加していた(ポワソン回帰モデル)ものの、今回の調査では他の疾患においては統計学的には有意な差異はなかった。本研究の結果に関しては患者数が少なく統計学的な差異を生じなかった可能性と、これまでの震災の経験から配薬などを確実に行った成果が得られた可能性が示唆された われわれは災害時における心血管疾患の発生率について述べた。唯一、静脈血栓症のみを減少させることができなかったが今後はマスメディアを使用した予防啓発活動により静脈血栓塞栓症の発症を減らすことができるかも知れない。
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