研究課題
ヒトヘルペスウイルス6 (HHV-6) はすべての成人に潜伏感染するβヘルペスウイルスである。同種臍帯血移植では80%以上の症例で再活性化がみられ、5~10%でHHV-6脳炎をきたす。本研究は、HHV-6再活性化が臨床的に診断される脳炎以外にも認知機能低下、QOL低下に関係している可能性を考え、HHV-6再活性化のPCR法によるモニタリングと認知機能検査を行うことによりその仮説を検証する。本研究は日本造血細胞移植学会学会主導研究としてH30/7/6に承認が得られた。試験デザインは全国多施設参加による前向き観察研究であり、11施設参加により44例が症例登録期間 (R2/12) までに登録された。移植後70日目までのせん妄解析が終了した症例17例における中間解析ではDRS-R-98 >2は75%, >9は12.5%にみられた。注意集中力障害はHHV-6再活性化前後1週間 (HHV-6 window) に40%にみられ、それ以外の時期での発症は18.2%であった (P=0.025)。見当識障害はHHV-6 windowで20%、それ以外の時期では4.5%であった (P=0.017)。HHV-6再活性化は臨床的に脳炎と診断されていない症例においても、多くの症例において、中枢神経機能に急性の機能障害を与えていることが示された。本試験では症例登録は終了しているが、今後移植後1年における認知機能、注意集中力、QOL評価を残しており、この評価によりHHV-6の長期的な認知機能に与える影響について明らかとする。その検討はウイルス感染が癌患者の認知機能に影響を与えることをはじめて示すとともに、予防可能な認知機能障害を明らかとすることに繋がると考えている。
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Transplant Infectious Disease
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