研究課題
本研究では、抗レトロウイルス療法(ART)開始時期がその後のプロウイルスの動態に及ぼす影響を調べることを目的として、急性期にHIV感染が判明し3ヶ月以内にARTを開始した症例および慢性期にARTを開始した症例を対象とし、ART開始以前の未治療期とART開始後概ね1年後までの比較的短期間に焦点をおいて、ART開始時期とプロウイルスの動態との関連を検討した。未治療期のプロウイルス量は慢性期症例に比べ急性期症例で低い傾向が見られたが、ART施行後は両群の間で大きな差は認められなかった。ART開始後に複数回サンプリングが可能であった急性期6症例、慢性期7症例について、single-genomePCR/シークエンス法により各サンプルのプロウイルスクローンを解析したところ、急性期症例はART施行前からプロウイルスの多様性が低く、ART施行後は速やかに系統樹上で均一なクローン集団を形成した。一方、慢性期症例のプロウイルスはART施行前からVL<20コピー達成以降も高い多様性を維持しており、急性期ART施行例における残存プロウイルスとは質的に異なっていると考えられた。APOBEC3G/F(A3G/F)は抗HIV-1活性を有する宿主因子のひとつで、HIV-1粒子に取り込まれたA3G/Fは標的細胞内でウイルスがゲノムを複製する際にGからAへの変異を高頻度に導入する(G-to-A Hypermutation)ことによりHIV-1の複製を阻害することが知られているが、解析したプロウイルスクローンの約13%においてA3G/Fによると考えられるG-to-A Hypermutationが検出された。急性期症例と慢性期症例の比較では変異導入率に有意差は認められなかったが、両群ともにART開始後VLが<20コピーに到達するまでの間はART開始前に比べて変異導入率が有意に高かった。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
Preventive Medicine Reports
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Emerge. Infect. Dis.
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