研究実績の概要 |
平成29年度に行った弘前大学大学院医学研究科の岩木プロジェクトで回収した血清および便サンプルの解析を行った。採取された血清は同プロジェクトの検査項目に加えて、本研究の抗ヘリコバクターIgG抗体価とペプシノーゲンIとIIと便サンプルから測定した便中ピロリ菌抗原の結果から、参加者をピロリ菌現感染者、既感染者、未感染者に分類し、ペプシノーゲンの値からは胃酸分泌能を推定した。腸内細菌叢については次世代シーケンサーのMiseqを用い16SrRNA遺伝子塩基配列より検体に由来する菌群の帰属を推定した。 その結果から、Frontiers in Immunology誌において、Lactobacillusに注目し、ピロリ菌感染による胃粘膜萎縮者では腸内細菌叢内でのLactobacillusが増加していることを報告した(Iino C, Shimoyama T, Chinda D et al. 9:712. doi:10.3389/fimmu.2018.00712.)。 一方、ピロリ菌感染が腸内細菌叢に与える影響としては、門で3種、網で3種、目で3種、科で9種、属で18種の存在率で、感染者と非感染者に有意差を認めた。感染者の中でも、胃粘膜高度萎縮者と胃粘膜萎縮陰性者では、Actinomyces, Rothia, Eggerthella, Bacteroides, Prevotella, Granulicatella, Lactobacillus, Streptococcus, Anaerostipes, Blautia, Raoultella, Haemophilusの12種の属において有意に存在率に差を認めた。これらの結果は日本ヘリコバクター学会と腸内細菌学会において飯野勢先生により報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果の一部について論文で発信できた(Iino C, Shimoyama T, Chinda D, Arai T, Chiba D, Nakaji S, Fukuda S. Front Immunol. 2018;9:712. doi:10.3389/fimmu.2018.00712. eCollection 2018.)。 また、他の結果の一部についても学会にて報告した。
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