研究課題
ロタウイルスは小児急性胃腸炎の代表的な原因ウイルスであり、2 種類のロタウイルス経口弱毒生ワクチンが開発されている。出生後半年以内に接種するため、母乳中の分泌型IgA や経胎盤IgG など母体由来の免疫学的要素がワクチンの効果を大きく左右するが、わが国においては母体要因に焦点を当てた研究は無い。令和3年度では、ロタウイルスワクチン接種前後の児の血清中抗ロタウイルス IgA、IgG抗体に焦点をあてて、解析を行った。2017年11月~2018年9月に東京大学医学部附属病院産婦人科後期妊婦健診を受診し、研究参加に同意が得られた女性より出生した37名の母乳栄養児を対象とした。単価ロタウイルスワクチン(Rotarix)接種前、2回目接種4週間後に得られた血清に対し、Rotarixワクチン原液を大量培養精製した抗原を敷いたELISA法にて、標準血清によるarbitrary unitを用いて抗体価を定量化した。Rotarix 2回接種前後で、抗ロタウイルスIgG抗体価の平均値はほぼ不変であったが、抗ロタウイルスIgA抗体価の平均値は有意に上昇した。2回ワクチン接種前後の抗ロタウイルスIgA抗体価の比が2倍以上に上昇した児(A群)としなかった児(B群)において、母体血清中の抗ロタウイルスIgA、IgG抗体価、母乳(初乳、成乳)中の中和活性、抗ロタウイルスIgA、IgG抗体価を比較したところ、母体血清中の抗ロタウイルスIgG抗体価の平均値のみ、B群がA群より有意に高かった。母児ペアの検討を行ったニカラグアにおける先行研究においても、母体の血清抗ロタウイルスIgG抗体が高いほど、児の抗体獲得率が低い傾向を示したことが報告されており、経胎盤移行したIgGが、児のRVワクチンに対する免疫応答を阻害する可能性が示唆された。
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日本母乳哺育学会雑誌
巻: 印刷中 ページ: -
Human Vaccine and Immunotherapy
巻: 17 ページ: 3613-3618
10.1080/21645515.2021.1925060
Clinical Laboratory
巻: 67 ページ: -
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