研究課題/領域番号 |
17K09103
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
土屋 康雄 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60334679)
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研究分担者 |
浅井 孝夫 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (60612736)
生駒 俊和 北陸大学, 医療保健学部, 准教授 (60612744)
中村 和利 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70207869)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胆嚢がん / インド / メタゲノム解析 / 腸チフス感染 / パラチフス感染 / 抗体価 |
研究実績の概要 |
平成30年度の計画は、インドで採取した胆汁試料を日本に持ち込み、DNA抽出後、メタゲノム解析を行うことであった。 胆嚢がん患者と胆石症患者からの胆汁試料の採取は、特に胆嚢がん患者が進行期で診断される例が多いことから予定していた100例を年度内に採取することが不可能であった。このため、引き続き胆汁試料の採取を継続している。 平成30年度には、胆嚢がん患者と胆石症患者から採取した血漿を用いて、腸チフス菌のVi抗原とO抗原、パラチフスA菌とB菌のO抗原に対する抗体価を改良ウィダール反応により測定した。さらに、血清を用いて、腸チフス菌のIgG LPS抗原に対する抗体価をELISA法により測定し各々の抗体価の陽性率を両群間で比較した。 胆嚢がん患者のVi抗体価の陽性率44.0%(44/100)は胆石症患者の14.7%(14/95)に比べ有意に高く(P<0.001)、パラチフスA菌のO抗体価も有意に高かった(胆嚢がん患者17.0%:胆石症患者1.1%、P<0.001)。しかし、腸チフス菌O抗体価、パラチフスB菌のO抗体価、LPS抗体価には両群間で有意差は認められなかった。Vi抗体価の陽性率が最も高かったのは、胆嚢がん患者(55.6%)、胆石症患者(41.6%)何れも60歳代であった。また、胆嚢がん患者のVi抗体価の陽性率は、女性で41.7%、男性で50.0%とほぼ近似した値を示した。 我々の結果は、改良ウィダール反応による胆嚢がん患者のVi抗体価とパラチフスA菌のO抗体価は胆石症患者に比べ有意に高く、本法はインドの腸チフス菌感染と胆嚢がんリスクとの関係を明らかにするために有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では平成30年度内に胆嚢がん患者と胆石症患者各々100例から胆汁試料の採取を終え、メタゲノム解析を実施し、各々の患者の胆汁中に常在している細菌叢を明らかにする予定であった。しかし、試料採取が遅れており、メタゲノム解析までに至らなかった。平成30年度末時点で採取できた胆汁試料数は、胆嚢がん患者から約30例、胆石症患者から約80例であった。このように、目標とした胆汁試料数に達していないことから、引き続き2019年末まで試料の採取をお願いしている。このため、当初の計画よりやや遅れている状況である。 しかし、平成31年度に計画していた、腸チフスやパラチフス菌感染の感染歴を検証するための抗体価測定は平成30年度中に終了し、インド北部における胆嚢がん発症にこれらの菌の感染が関係している可能性を示唆する知見を得た。 平成31年度には、2019年末までに採取できた胆汁試料からDNA抽出を行い、メタゲノム解析を行い、各々の患者の胆汁中に常在している細菌叢を明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度には、平成30年度に予定していたメタゲノム解析により、胆嚢がん患者と胆石症患者の胆汁中に常在する細菌類のDNAを網羅的に調べ、胆嚢がん患者の胆汁中に特異的に存在する細菌叢を明らかにする予定である その方法は、インドのサンジャイ・カンジー医科学大学院病院で胆嚢がん患者と胆石症患者から採取した胆汁試料中から、同大学院、消化器外科学教室の実験室において市販のDNA抽出キットを用いてDNAを抽出する。抽出したDNAを日本に保冷状態で持ち込みメタゲノム解析(16S rRNA菌叢解析)を実施する予定である。なお、このメタゲノム解析は外部委託する予定である。 両患者からの胆汁試料の採取は、2019年12月末までお願いし、当初目標とした試料数の確保を目指す。100人の胆石症患者からの胆汁採取は問題なく実施できるが、100人の胆嚢がん患者からの胆汁採取は困難かもしれない。この場合、黄色肉芽腫性胆嚢炎(XBC)は胆嚢壁に肉芽腫を形成する胆嚢炎の一亜型であることから、この患者からの胆汁も含めて検討する。採取した胆汁が目標数に達しない場合でも得られた試料を用いて解析することで初期の目的を達成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に実施予定であった胆嚢がん患者と胆石症患者の胆汁中細菌叢解明のためのメタゲノム解析が胆汁試料採取の遅れにより年度内に実施不可能であった。代わりに、30年度には31年度に予定していた腸チフス、パラチフス菌感染確認のための改良ウィダール反応による血漿抗体価測定を実施した。これにより、メタゲノム解析を外部委託する費用から抗体価測定に要した費用を差し引いた額が次年度に繰り越された。 平成31年度には、当初計画していた腸チフス、パラチフス菌感染(30年度実施)とヘリコバクター ピロリ菌感染(29年度に実施)の検証のために必要な抗体価測定用費用と前年度繰越金を合計した額を合わせて、メタゲノム解析の外部委託費として使用する予定である。
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