研究課題/領域番号 |
17K09103
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
土屋 康雄 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60334679)
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研究分担者 |
浅井 孝夫 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (60612736)
生駒 俊和 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60612744)
中村 和利 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70207869)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胆嚢がん / インド / 腸チフス菌感染 / 改良ウィダール反応 |
研究実績の概要 |
本研究は当初、2017年度から2019年度までの3か年の予定であった。しかし、インド医療評議会(Indian Council of Medical Research、ICMR)によるインドから日本への胆嚢がん患者と胆石症患者から採取した胆汁試料の輸送許可を2019年度中に得ることができなかった。このため、2019年度実施予定の計画を行うため、本研究期間を1年延長し2020年度までとすることの許可を得た。 2019年度には、前年度の本研究で明らかとなった、腸チフス菌感染と胆嚢がん発症との関連をさらに解明するため、新たに69例の胆嚢がん患者(20例の胆石を有する胆嚢がん患者、49例の胆石を有さない胆嚢がん患者)を対象に、腸チフス菌のVi抗原とO抗原、パラチフスA菌とB菌のO抗原に対する血清抗体価を改良ウィダール反応により測定した。その結果、胆石を有する胆嚢がん患者の腸チフス菌の抗体陽性率は50.0%(10/20)、胆石を有さない胆嚢がん患者の抗体陽性率は20.4%(10/49)で、オッズ比3.90、95%信頼区間1.27~11.94、有意差(P)0.014で、胆石を有する胆嚢がん患者の抗体陽性率は胆石を有さない胆嚢がん患者の抗体陽性率に比べ有意に高いことが解った。この結果は、我々の先の研究で得た知見同様、北インドにおける胆嚢がん発症に腸チフス菌感染が関与している可能性を強く支持するものであった。 また、ICMRから、インドから日本への試料の輸送許可を得るためにはインドにおける複数施設との共同研究とすべきとの指摘を受けたことから、バナラス・ヒンドゥー大学、医学部、外科学教室教授、Prof. Puneetの同意を得て、再度申請書をICMRに提出した。2020年度早々に結果が届くことになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、2019年度に胆嚢がん患者と胆石症患者各々100例から胆汁試料を採取し、DNA抽出後、メタゲノム解析を実施し、各々の患者の胆汁中に常在している細菌叢を明らかにする予定であった。しかし、ICMRからのインドから日本への試料輸送許可がなかなか下りず、このため試料採取も進まずメタゲノム解析までに至らなかった。2019年度末時点で採取できた胆汁試料数は、胆嚢がん患者から28例、胆石症患者から94例であった。 さらに、2020年度3月以降は、COVID-19感染の蔓延防止のためインド政府による全土にわたるロックアウト政策がとられていることから、さらに試料採取が困難な状態となっている。このように、目標とした胆汁試料数に達していないことから、引き続き2020年末まで試料の採取をお願いしている。このため、当初の計画より遅れている状況である。 しかし、当初計画していた、腸チフスやパラチフス菌やヘリコバクター・ピロリ菌の感染歴を検証するための抗体価測定は既に終了した。胆嚢がん患者と胆石症患者間のヘリコバクター・ピロリ菌抗体価には有意差は認められなかったが、インド北部における胆嚢がん発症に腸チフス菌感染が関係している可能性を示唆する知見を得ている。 2020年度、ICMRからの試料輸送許可が得られれば、採取できた胆汁試料を日本に輸送し、メタゲノム解析を行い、胆嚢がん患者と胆石症患者の胆汁中に常在している細菌叢を明らかにする予定である。なお、ICMRからの試料輸送許可が得られない場合は、胆汁試料中からのDNA抽出、その解析をサンジャイ・ガンジー医科学大学院で行い、当初の目的を達成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度には、メタゲノム解析により、胆嚢がん患者と胆石症患者の胆汁中に常在する細菌類のDNAを網羅的に調べ、胆嚢がん患者の胆汁中に特異的に存在する細菌叢を明らかにする予定である その方法は、インドのサンジャイ・カンジー医科学大学院病院で胆嚢がん患者と胆石症患者から採取した胆汁試料を日本に冷凍状態で搬入し、同試料中から市販のDNA抽出キットを用いてDNAを抽出する。抽出したDNAをメタゲノム解析(16S rRNA菌叢解析)する予定である。なお、このメタゲノム解析は外部委託する予定である。 両患者からの胆汁試料の採取は、2020年12月末までお願いし、当初目標とした試料数の確保を目指す。100人の胆石症患者からの胆汁採取は問題なく実施できるが、100人の胆嚢がん患者からの胆汁採取は困難が予想される。この場合、黄色肉芽腫性胆嚢炎(XBC)は胆嚢壁に肉芽腫を形成する胆嚢炎の一亜型であることから、この患者からの胆汁も含めて検討する。採取した胆汁が目標数に達しない場合でも得られた試料を用いて解析することで初期の目的を達成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度内に、胆嚢がん患者と胆石症患者から採取した胆汁試料をインドから日本へ輸送する許可がICMRより得ることができなかったため、メタゲノム解析を実施することができなかった。このための費用が次年度使用額として残った。 ICMRから採取した胆汁試料の輸送許可が得られた場合は、試料運搬のための日本ーインド往復の旅費とメタゲノム解析を外部委託する費用として使用する予定である。 一方、ICMRから試料輸送の許可が得られない場合は、胆汁試料からのDNA抽出とその解析をインド国内で実施せざるを得ない。この場合、DNA抽出、メタゲノム解析費用をインド研究者に支払う予定である。
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