研究課題
胃がん、胃潰瘍の原因とされるヘリコバクター・ピロリの除菌率を上げることは予防の観点からも最重要事項の1つである。しかし、患者の体質や健康状態、飲酒を含めた患者のライフスタイル等と除菌との関連は解明に至っていない。本研究ではピロリ菌1次除菌薬を服用した患者の除菌の成否と患者ライフスタイル、患者の体質等の属性との関連を検証することを目的として行っている。現在までの進捗状況として2017年より蓄積した患者の血液検査データの中でIgEに着目し、昨年ピロリ菌除菌回数とIgE値との関連を検証し、学会発表を行ったが、本年度はさらに抗生物質の感受性も考慮に入れた解析も行った。その結果、感受性を考慮に入れても、IgE値が高い患者ではH.pylori除菌の可能性が低いことが明らかになった。我々の知る限り、患者の血中IgE濃度をH. pylori除菌の観点から調査したのは、この研究が初めてであり、また、IgE高値が除菌失敗と関連していたことから、個人のアレルギー体質がH. pylori除菌失敗の要因となっている可能性が示唆された。この結果は2021年7月に論文として発表している。また、飲酒関連での分析の結果、飲酒習慣のあるピロリ菌除菌患者と高IgE値との関連が明らかとなり、先行研究と併せて考えると、飲酒によるIgE上昇が、H.pylori除菌失敗の危険因子である可能性が示唆された。機序に関しては、まだ判明していないこともあるが、アルコール摂取が免疫系に影響を及ぼし、IgEの生成を含むサイトカインの複雑な変化を引き起こすことなどが、報告されている。飲酒習慣に関連したIgE上昇に関して、ピロリ菌除菌失敗のリスク要因としても日常的な飲酒は好ましくないことが示唆された。この結果に関しては2022年1月の日本疫学会学術総会において発表を行った。
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Clinical and Experimental Gastroenterology
巻: Volume 14 ページ: 311~316
10.2147/CEG.S322512